理念・政策・メッセージ
2010.02.18
「絶対的不足状態にある
特別養護老人ホーム整備のために」
〜目的財源としての消費税増税を受け入れる有権者〜
安曇野市三郷地区で月例の介護者サロンに出席しているが、特別養護老人ホームの入居が非常に難しい現状が毎回必ず話題となる。
信濃毎日新聞が平成22年2月に長野県内の施設アンケートを行ったところ、特別養護老人ホームの入所希望待機者数は一施設当たり平均265名と平均利用者数の4倍を数える結果が出ている。複数の施設に申し込んでいる人が多いことを差し引いても大量待機者がいる事実には変わりはない。
何故特別養護老人ホーム入居が難しいのか。厚生労働省の担当者に聞くと、特別養護老人ホームなど介護基盤は最近の3年間で全国で8万人分整備されたものの、これは、自治体の計画見込み値11.5万人分の7割(全国平均)でしかないとのことである。計画の数値が需要を満たすに十分な数字であるかも疑問であるが、その目標ですらも達成されていない。未達成の理由として、(1)施設運営の収支が成り立ちにくい、(2)この分野の人材確保が難しい、(3)施設基盤整備のための補助制度が不十分、などの理由が挙げられる。
政府ではこの課題に対応するために、次のような対応を図ろうとしている。(1)収支については、介護保険制度開始以来マイナス改訂が続いた介護報酬を21年度から初めて3%プラス改定(2)人材確保については、平成21年度介護報酬改定(民間調査では月平均数千円の賃金アップという結果につながる)に加え、平成21年度補正予算で介護職員平均1.5万円の賃金引き上げのための処遇改善交付金4000億円を創設(全額国費、都道府県に基金を創設し平成23年度までの3年間対応)。雇用対策(平成21年10月)として、緊急雇用創出基金(全額国費)を利用して、介護施設で働きながら養成校に通って資格を取得する「介護雇用プログラム」を実施。(3)基盤整備のための補助については、平成21年度補正で緊急整備のための交付金3,000億を措置(全額国費、都道府県に基金を創設し、平成23年度までの3年間で16万人分)し、補助単価も1床200万円から350万円へと1.75倍に改善。ケア付き高齢者住宅を国土交通省と連携して平成23年度までに8万人分整備。23年度までの3年間で計24万人分の整備を目指す(これは平成18年〜20年の3倍のスピード)
以上の政府の対応で介護需要に答える施設整備が万全になるかといえば、心許ないものがある。
介護保険制度が導入され、支払った保険料に見合う施設入所という保険給付がいざという時に提供されない事実の持つ意味は深刻である。「保険」である以上、介護需要の発生という保険事故が生じた際に給付がなされないのでは保険の名が廃る。特に心身ともに家族の負担が大きい認知症介護の家族にとって、施設による支えがより欠かせないにも拘らず、その認知症故に施設入所を断られる状況が非常に多い事実は傍で見ていてもいたたまれない。現場で介護と医療の連携を進めるなど各地で取り組みは始まっているものの、喫緊の危機に答えられるものとはなっていない。
急速に進む高齢化という特殊事情はあるものの、制度的に抜本的な対応を図る必要がある。現在の制度の下では、施設整備により介護保険の保険料の上昇に対する住民の反発を嫌う市町村当局の立場、施設整備への財政負担(都道府県分は補助金を一般財源化し国の助成がない)を嫌がる都道府県の姿勢もあると言われる。
しかし、そろそろこの問題に対する基本的問題を考えなくてはならない。私は各地でミニ集会を行う中で、集って頂いた皆さまに、「特別養護老人ホームなどの整備を本格的に行うためだけに消費税の負担を2%お願いするとしたら賛成ですか反対ですか」、と問うと、多くの方が、「介護施設整備のためだけの特定目的のために消費税を上げるのであれば賛成である」と反応する。
老後の不安解消のためであれば、1,000円の買い物をしてその都度20円の負担をすることは受け入れるということなのである。新政権の行った事業仕分けで明らかになったことは、民主党が選挙前に言っていた途方もない無駄は実際には存在しなかったということである。そろそろ社会保障の不安を解消するための負担の問題を議論していくべき時期になっている。