理念・政策・メッセージ
2009.11.06
「コンクリートから人へ?」
〜環境ビジネスで活性化している山形村のコンクリート会社〜
最近「コンクリートから人へ」、という政治的プロパガンダが政治の場で飛び交っている。一見それが耳触りのよい響きのように思える。「脱ダム」象徴される用語の陰には、「コンクリート」=「環境破壊」という決め付けがあるように思われる。このような一方的な決め付けが必ずしも適切ではないという事実を、山形村のある企業を訪問して再認識できた気持ちになった。
山形村にある「オーイケ」というコンクリート会社の製品は、最新技術を結集し、現代の喫緊の課題である環境保全や災害防止に大いに貢献している。
一例を紹介すると、CCボックスを使って電線や光ファイバーを地中化、市街地から電柱を消し、自動車リサイクル法で義務づけられている油水分離槽を工夫し、雨水貯留浸透桝により集中豪雨などで街が水浸しになるのを防いでいる。また、駐車場には環境にやさしいパーキングブロックを用意している。
コンクリートビジネスに環境的視野を付加することで、新たな市場を開拓しているのである。元気の出る企業戦略により、この会社は成長を続け、この10年間で社員数は約2倍に、売上高は10年間で4倍に拡大した由。大手に負けないオリジナル製品を数多く持ち、取得した特許は100件以上に上っていることがその成功の秘訣のようである。最近では、外国からの引き合いも増えているとのこと。
土壌の自然な浄化能力を活用した自己完結的で無放流式の汚水処理システムは北アルプスの槍ケ岳ロッジをはじめとして各地域で導入されている。大池社長の話では、最近、この会社の日本語のサイトを調べた韓国政府が日本海の孤島のトイレのシステムとして導入の打診をしてきているのだそうだ。実はこの島はウルルン島(鬱陵島)とのこと。竹島(韓国名;独島)の領有問題を巡り日韓両国政府間で大きな政治問題になっているが、ウルルン島はその竹島の近海にある島で、韓国大統領が頻繁にウルルン島を訪れる都度、島のトイレのシステムが問題になり、これまでは汚水を貯めて日本海に海洋投棄していたものを、この会社の汚水処理システムを活用し環境にやさしい汚水処理を行うということになっているのだそうだ。日韓両国政府の政治的せめぎあいの陰に、長野県のコンクリート会社の技術がある、というのも面白い発見である。
農山村である山形村にある一見のどかな地方のコンクリート会社が、国際的な環境ビジネスの最前線に飛躍しつつあるのを垣間見て、地域産業の底力を感じる一方で、特定の分野に政治的レッテルを張り、その実業のイメージを悪化させることの問題点も少なからず感じたところである。