理念・政策・メッセージ
2012.09.04
「養鶏場の経営理念と領土問題」
〜会田共同養鶏組合の理念と実践に学ぶ〜
長野県松本市四賀地区(旧四賀村)に創立50年を迎える会田共同養鶏組合という安全安心な卵を生産する農事組合法人がある。前四賀村村長の中島学氏が組合長を務めるこの法人は、地元で大きな存在感のある事業所である。
創業の精神として、食の安全にこだわる、生態系を尊重し循環型農業を確立する、地域社会と協力する、という理念を掲げ、実際に鶏の全ての餌の素材を吟味し自らブレンドする自家配合飼料を作り、遺伝子組み換え穀物を排除し、鶏舎に敷く藁と籾も有機無農薬で作ったものにこだわるという運営を行っている。安全安心な卵は、健康な鶏から生まれるとの考え方から、鶏の健康状態に留意し、餌と飼育環境に細心の注意を払う。「アニマルウェルフェアー」という聞き慣れない言葉もこの農場では普通に語られる。
鶏の糞は微生物で消臭し、田んぼに肥料として還元している。また休耕田に飼料用の米を栽培し、「米たまご」としてのブランド卵も売り出している。ゲージの中ではなく、放し飼いの鶏から、「平飼いたまご」も売り出している。その結果、卵の厳しい価格競争の中にも拘わらず、付加価値の高い健康で安心な卵として、高価にも拘わらず消費者に圧倒的な人気を誇る実績を上げている。インターネットでも食の安全の見本のような卵として取り上げられている。
中島組合長の話を伺っていると、明確な経営理念を確立し、それに沿って養鶏技術を一つ一つ丹念に練り上げていくことで市場や消費者の理解を勝ち得てきた経緯がよく分かる。中島組合長は、村長を経験した政治家でもある。その組合長が、領土問題について憂慮の念を抱いておられた。組合長と私の会話の中で共通認識として出されたのは、日本国として領土問題に関する毅然とした方針、明確な国家メッセージが存在しないことが周辺諸国の膨張主義要求を招いているのではないかということであった。
小さな事業所の経営も国家運営もその成否の基本は同根である。明確な理念に基づく経営が行われているか否かである。何を目指すのか分からない経営、政権運営では、その時々の雰囲気で押したり引いたりすることになりかねない。いつの時代でも守らなければならないものは何か、譲ってはならないものは何か、についてしっかりとした国家メッセージが必要なのである。そしてその国家メッセージを示すために常日頃の地道な行動実績が必要なのである。
日本政府は、長野県にある養鶏場の経営姿勢に学ばなければならない。