自由民主党

衆議院議員 むたい俊介オフィシャルサイト 長野2区 自民党
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2008.09.22

理念・政策・メッセージ

「一学年丸ごと(年間100万人)の
児童生徒農山村合宿構想」


 和歌山県海南市長を経験された石田真敏衆議院議員が、地域再生と子供の教育を一体的に結び付ける包括的な構想をお持ちだ。現在、都市の子供を農山村で短期間過ごさせるプログラムは全国で動いており、子供が大いに成長している事例は多々ある。派遣元では武蔵野市のプログラム、受け入れ側では飯田市のプログラムが著名である。


 石田議員は、これを全国展開するシステムとして組み込めないかとの所論をお持ちであり、これは私の予てからの考えと一致し、互いに意見交換をする中で、躍動するようなイメージが膨らんでいった。


 互いの議論の結果は、「現在の小中学校の各学年の人数はおおよそ100万人。この子供たちを、例えば半月毎に、年に10月、クラス単位で合宿させ農村で過ごさせる。半月で100人だと一月で200人、10月では2,000人になる。100万人を2,000人で割ると、全国で500箇所の受け入れ先が必要となる。廃校に手を入れたり、寄宿舎を整備したり、農家にホームステイしたり、受け皿の整備を行う。ほぼ通年に渡り、経常的に2,000人規模の子供が、農村地域に入り込んで生活をするということになると、地域社会でビジネスが成り立ち、地域経済の活性化にもなる。」との提案に収斂した。


 受け入れ側の農山村にとってもビジネスとして成り立つような仕組みというのは、継続性の面から見て大事な発想である。


 さて、平成18年度の学校基本調査によると、小・中・高校ともに各学年、120万人前後の生徒数を数えている。最近の出生数は100万人程度であり、この数が、招来の毎年の生徒数として見込める数である。毎年100万人規模の児童生徒に、学校教育の一環として農山村に親しんでもらう機会を付与し、情操教育の手段としていくことは、今日の公教育の荒廃が叫ばれている中で、必要な発想である。おまけに、そのことが地域社会にとっての活力の源にもなるということは、一石二鳥だ。


 先行的に短期間の農村交流を実施している武蔵野市では、山村滞在を果たした生徒が見違えるように元気になって帰ってくるのだそうだ。この事業を開始した当時の土屋正忠武蔵野市長は、当初1ヶ月の農村滞在を考えていたものの、学校の先生の負担を考え、9泊10日の短期滞在に止めているようであるが、それでも学校の先生の負担、補充の先生の確保、派遣経費など武蔵野市の負担は少なくない。


 それでも、生徒が見違えるようになって帰ってくるのを実感した親の熱烈な支持があるので、学校の先生も「負担になるからやめよう」とはいえない雰囲気があるのだそうだ。


 武蔵野市の成功を見た千葉市でも、同趣旨の農村への生徒の交流を始めているという話を、農林水産省の都市農業・地域交流室長(当時)の下條龍二さんから伺った。都市と農村の交流事業に詳しい下條さんの認識だと、一番のネックは、確実に負担の増える学校現場の先生方なのだそうだ。確かに、最近富に学校現場の負担感は高まっている。


 しかし発想を変えることは十分可能だ。学校の先生は、普段どおりの授業をすれば十分。交流事業を支えるのは、地元であったり、NPOであったり、地域社会であったり、要は受け皿のシステムを確立していけば課題は解決可能なように思われる。


 現在は、団塊の世代が大量に退職している途中である。この人たちは、体力・気力・資金力がある。引退して何をしたらいいのか、迷っている。まだまだ仕事をしたい人もいるだろう。しかし仕事だけではない社会貢献にも乗り出したい気持ちの人は多いはずだ。その人たちの潜在的気持ちを引き出す仕組みを組み立てることができれば、学校現場の先生方に過度な負担を負荷することは避けられる。


 こうした子供の農村体験プログラムの展開次第では、団塊世代の農村移住も促進されることにもなる。「頑張る地方応援プログラム」という地方交付税による地方応援制度があるが、例えばこの成果指標に、市町村毎の他地域からの子供の受け入れ延べ人数の指標を把握できれば、この支援のプログラムにも乗せることができるかもしれない。


 子供の地域間循環が、実は凄まじいばかりの地域経済活性化のプラスの相乗効果を生むことになり得る。


 ところで、石田衆議院議員は、別途「定年前帰農促進事業」を提案されている。そのエッセンスは以下のとおりだ。


・現在の就業形態は人生60年時代の就業形態であり、60才定年制を65才に延長したとしても、人生80年時代を迎えた現在、それにふさわしい新就業形態を構築しなければ、多くの人が業に就くことなく20年に及ぶ長い余生を過ごすことになる。

・そこで新就業形態の一つとして、50才前後、即ち老後を含めた自身の将来について深く考えはじめる年令層が第2の就業として就農を選択しやすい制度をつくることが出来れば、現在の定年後の就農がホビー農業になりがちなのに対し、就農後20年以上営農に携わることができ、65才からは年金受給が可能になることにより、ゆとりある充実した老後をおくることができる。

・50才前後の新規就農者は、今後20年以上農業の担い手となり、また地域を支える貴重な人材となりうる。そして、新規就農者の出現は、耕作放棄地などの課題解決にもつながる。

・現在の対象者の多くは、地方出身者と考えられるが、彼らの子供達は都会生まれであり田舎をもたない。このままの状況が続けば、子供達が田舎へ回帰することは特別の場合を除いてなくなる。この事業により対象者たる親が帰農すれば、子供達にとって親の帰農地は故郷となり、将来子供達も親と同じく帰農の道を歩む可能性が生まれ、都市と農村との循環が生まれうる。 対象者の多くが地方出身者である今のうちに、この循環システムを創設すべきである。


 さて、農山村体験を子供のうちに積ませることは、「定年前帰農促進事業」という石田議員の別の提案との整合性が十分あり得る。子供に対する教育投資が余りにも少ないと指摘されている我が国の財政資金の配分に、新たな視点を与える提案のようにも思われる。


 日本の将来と現場の状況を踏まえた地域社会の安定的存続に対する貴重な提案と受け止められる提案である。このような施策を全国的、体系的に講じることを通じ、都市と農村のシンパシーを醸成しなければ日本の国は内部から滅びる。「若者の教育を怠る国は滅びる」というのが、文明史家の警句である。


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