理念・政策・メッセージ
2025.07.05
「登山道草刈り作業に参加して考えたこと」
〜登山道整備に公的関与強化が必要〜
令和7年6月末の1日、堀金登山案内人組合の会員として、三股登山口から常念岳、蝶ヶ岳に通じる登山道の草刈り作業に従事しました。堀金登山案内人組合は、常念岳・蝶ヶ岳への三股(みつまた)登山口を担当している北アルプス登山案内人組合連合会所属の組合です。1919年に結成され、今年で106年を経過する歴史ある組合です。登山ガイドをはじめ、登山道整備、登山者指導、遭難時の救助などを行っています。
登山道の草刈りは思った以上にきつい作業です。草刈りは毎年この時期に行ってきています。一度手を抜くと、そこに熊笹が生い茂り、登山道山行の環境が悪くなるので、ビーバーでこまめに登山道沿道の熊笹を刈り、それを熊手で登山道の脇に集めるという役割分担を組み、チームで作業を行います。ビーバーは結構重い設備でありそれを抱えて登山道を登ることは体力を要します。私は、そこまでの体力が無いので、熊手班に配属され、熊手を抱えてビーバー班を追いかける役割を務めました。
一方で、登山道には倒木が目立ち、登山道を塞ぐ大木を森林組合所属の案内人組合員がチェーンソーで手際よく裁いてゆきました。今回の登山道整備で片づけた倒木は8本でした。
登山道の草刈りを効率よく行うために、森林限界地区まで先ず登り刈り下がってくるグループと、登山口から刈り上がっていくグループに分かれ、中間点で合流したところで一緒に登山口に戻るという手法もとられました。
早朝6時にスタートし、登山口に戻ったグループの作業終了時刻は16時でした。10時間の作業はその後の慰労会でのビールを美味いと思わせるに十分な時間となりました。
この作業に対する報酬は、参加者に7000円の謝礼が支払われることになっています。逆に組合員で不参加の人には5000円の出不足金が徴収されます。そういうシステムの元、20名を超える組合員の参加を確保できましたが、年配の組合員にはそれなりに配慮した割り当てが行われました。
チェーンソーで倒木対応をした組合員の話では、今回のような倒木処理作業の市場価値は8万円と算定されるそうです。それを7000円で行ったのですから、大変安上がりであり、ほとんどボランティアベースと言っても良い作業でした。
作業の途中、すれ違った登山者からは、口々に我々の作業に対しての感謝の言葉が発せられていました。稲越利夫組合長は、同行取材記者のインタビューに答え、地元案内人組合の心意気だけに頼るこうした作業がいつまで続けられるものかという本音を語っていました。
なお、登山口までのアプローチ道路には、登山者の車が路上駐車されていました。地元自治体の登山者対応の対応も検討課題です。財源確保も含め、考えていかねばなりません。
私は、登山道整備や山小屋維持に関して、例えば登山環境整備基本法といった法律を作り、山岳環境保全の体制構築、公的支援や財源措置の根拠を整備しないと、将来に亘って登山環境が維持できないと考えています。これまで、北アルプスを選挙区に抱える代議士として、この法律整備に向けた作業を継続していましたが、令和6年の総選挙で議席を失ってその検討が中断しています。在野の立場にはなりましたが、現場対応を行う登山案内人組合員の一員として、改めて登山道や山小屋の実態を踏まえた対応を何らかの形で行ってゆきたいと、改めて心に誓いました。