理念・政策・メッセージ
2025.01.11
「能登半島地震で実感したトレーラーハウスの有用性」
〜高い機能、安価な設置費、RVパークの活用〜
令和6年正月に発災した能登半島地震から1年を経過し、1月7日、8日の両日、4回目の被災地訪問を行って参りました。被災地には5000軒を越える多くの仮設住宅が立ち並び、倒壊した建物の撤去も進み、ライフラインも不十分ながら改善し、被災地には何とはなしにほっとした雰囲気が漂っていました。
今回、私は代議士の立場ではなく、一般人として能登半島に入りました。分刻みの時間の制約もなく、被災者個人の本音の気持ちにも接する機会を得ることができました。
最初に訪れた輪島市門前町の門前高校では、同校に併設されている特別支援学級の生徒の為に3台のトレーラーハウスが設置されその鍵の引き渡しに立ち会う機会を得ました。予てからの知己である長野市内のトレーラーハウス製造会社のカンバーランド原田英世社長がお誘いくださいました。門前高校では始業式に被災した校舎の修復が間に合わず、昨年末に急遽仮設教室としてトレーラーハウス投入が検討され、原田社長がそれを受け、年末に長野市のイベント広場で使われていたトレーラーハウス3台を牽引車で輪島市門前町まで引き込み、半日で無事設置終了となりました。特別支援学級の先生方は大喜び、床暖房も設置されたトレーラーハウスは校舎の教室よりも温かく快適だと大好評でした。この教室代替トレーラーハウスは1ヶ月過ぎると、また長野市に戻され、次の活躍の場に備えることになる予定です。
このタイプのトレーラーハウスは冷暖房はあるものの、トイレ、風呂、キッチンは備わっていません。一方で、能登半島地震後に設置された仮設住宅代替のトレーラーハウスにはこれらの機能も備わっています。特に、床暖房は寒冷地では好評で、一般の仮設住宅には無い機能として羨ましがられています。
内灘町でトレーラーハウスに仮設住宅代わりに入居されているご婦人は、温かくて広くてと大満足の様子、長屋風の仮設住宅と異なり、独立性もあり、精神的にもほっとできるという話を伺うことができました。
実は、このトレーラーハウスは、機能性が高いわりに仮設住宅に比べ高価ではありません。長屋風の仮設住宅が物価高騰の中で、一戸1800万円するのに対して、諸工事費を加えても2/3程度の経費で収まり、しかも不要となっても壊すこと無く次の需要先に向けて転戦できるのです。一般の仮設住宅は、撤去、廃棄することとなり、資源の有効活用という意味で問題があります。
能登半島地震の際に、私はカンバーランド原田社長と発災後2週間で志賀町にトレーラーハウスを持ち込み、志賀町長に見てもらいました。当選直後の新人町長は、トレーラーハウスの機動性、機能の高さに目を見張り、その場で原田社長に50台の設置要請を行いました。しかし、その後、石川県当局の意向で、志賀町だけに偏った対応は適切ではないと、20台の設置に抑えられたという経緯があります。
能登半島ではその後、仮設住宅の設置が進み、5000を超える住宅が整備されたのですが、それが必要量の整備がなされるまで1年近くを要しました。しかも設置費用が高騰したのです。今後、仮設住宅が不要になった場合の撤去、廃棄も見込むと、果たして仮設住宅のシステムだけでの対応が適切なのか否か、しっかりと考えるべき時期だと感じます。
これからは南海トラフ地震、東京の直下型地震など国難級超巨大地震が想定されます。その時に、地震が起きてからえっちらおっちら仮設住宅を作っていては災害関連死はうなぎ登りです。
私は、政治活動をするなかでこうした問題意識を持ち、被災地に即時に駆け付けられるトレーラーハウスを平時から備蓄し有事には被災地に駆け付けるシステムの構築を政治の場で提言して参りました。その上で、普段、ただ備蓄するのではなく、例えばRVパークのようなところでキャンプ用に活用し、非常時に被災地に提供するというやり方(平時活用、有事機能)が望ましいと考えています。
米国ではFEMA が民間備蓄という考え方の元に、500万台のトレーラーハウスを平時活用有事利用というシステムを構築しています。勿論、非常時活用の際には、公的資金が投入されることは言うまでもありません。
日本でも防災庁構想が動き始め、防災資源の平時からの備蓄について本格的な検討が始まっています。日本全体で災害時活用のトレーラーハウスがどの程度必要なのか、それをどのように効果的に準備しておくべきなのか、検討の行方に期待し、私自身も、予てからの主張を実現する機会が到来したと考え、積極的に動いてまいりたいと考えています。
今回の珠洲市訪問の際には、泉谷珠洲市長に、珠洲市にRVパークのようなものを設置したらどうかと、水を向けました。珠洲市では、現在、一般の訪問者が宿泊できる施設がありません。私達が泊まった珠洲ビーチホテルも復旧工事関係者で満杯でした。RVパークのようなものを設置し、例えば珠洲市に設置のトレーラーハウスに全国の大学の学生が宿泊し、珠洲市の大自然の中で授業を受けながら地域を元気にする活動に従事するといったプロジェクトを立ち上げたら珠洲市がどんなにか活性化するであろうか、と申し上げました。トレーラーハウスの活用は災害時の有効性はもとより、地域活性化に結び付くのです。
実は、このアイデアには伏線があります。私は2011年の東日本大震災の際には神奈川大学教授でした。この大災害時に、学生に被災地支援の経験を積ませたいと考え、神奈川大学と友好関係にあった岩手県遠野市と連携し、神大ボランティア駅伝の仕組みを大学当局に提案し実現して頂きました。神奈川大学から岩手県にシャトルバスを往復させ、常に相当数の学生ボランティアが被災地支援の作業を行うという仕組みです。この制度の結果、多くの神大生が東北の被災地支援の体験を積みました。私もゼミ学生を伴い、何度か被災著に赴き、その記録を冊子にまとめ、ゼミ生が卒業する際にプレゼントしました。後で学生に聞くと、大学生活で最も思い出に残る経験であったという嬉しい声を聴きました。しかしこの時には、公共施設での雑魚寝で対応せざるを得ませんでした。
当時はトレーラーハウスという発想はありませんでしたが、時代は進化しています。非常時に思いついたように対応するのではなく、普段から大災害に備える仕組みを用意すべきなのです。災害現場に赴く度に、様々な課題の出口が見えてきます。