理念・政策・メッセージ
2024.06.29
「日英の両陛下、スピーチで登山を語る」
〜バッキンガム宮殿のスピーチから〜
天皇皇后両陛下が国賓として英国を訪問され、現地で大歓迎を受けておられる姿に接し、日本国民として誇らしい気持ちを持つと同時に、皇室制度を持つ日本の伝統文化の奥深さを再認識する機会となりました。皇室制度に対しては、様々な見方があることも事実ですが、千数百年万世一系の血筋を維持してきている文化的歴史的意義を我々はしっかりと評価しなくてはなりません。
そのような中、訪問時、6月25日の晩にバッキンガム宮殿で催行された晩餐会でのチャールズ国王、天皇陛下のスピーチの全文を読む機会がありました。私自身も思い入れのある内容が含まれていたことに、痛く感動しました。
チャールズ国王は、「19世紀後半、ウオルター・ウェストンを始めとする英国人の登山家たちが、日本で目にした風景に魅了され、日本にリクレーション登山を広げるきっかけを作りました。山登りを愛する気持ちは、今や多くの日本と英国の皆さんが共有しており、とりわけ個人レベルで言えば、陛下と私自身に当てはまります」と挨拶されました。ウェストンは、日本アルプスの素晴らしさを欧州に紹介した立役者として日本では有名ですが、必ずしも英国で評価されているとは言えないウェストンの存在を、英国国王が改めて言及し掘り起こしたことで、結果的に日本アルプスにも世界の目が向くことになると期待しています。
このチャールズ国王のコメントに対して、天皇陛下は、「裾野が広がる雄大な山と、先人が踏み固めた道を頼りに、感謝と尊敬の念と誇りを胸に、更に高みに登る機会を得ている我々は幸運と言えるでしょう」と、登山を引き合いに出し、日英関係の発展につなげる期待を表明されました。天皇陛下は、皇太子時代に、上高地で催行された「山の日」記念式典に出席のため、ご一家で松本市を訪問され、その際には「山の日」制定に議員連盟事務局長として汗をかいた私も、拝謁の栄に浴することが出来ました。
日英の両陛下とも環境エコロジストで登山愛好家として著名な方です。日英両国民とも自然と登山を愛するという国民性も似ています。その日本では、10年前に新たに国民の祝日「山の日」が制定されています。一方で、コロナ禍を経て登山道、山小屋の状態は厳しい環境に置かれています。期せずして天皇陛下の英国訪問の際に交わされたスピーチの内容にさりげなく触れられた言葉の神髄に思いを致し、登山環境整備に関する施策の充実を図ろうと、密かに決意を固めた私でした。