理念・政策・メッセージ
2024.05.08
「信濃町全国小中学生俳句大会に出席して」
〜平和とはおいしい水が飲める夏〜
毎年子供の日に長野県信濃町では全国小中学生俳句大会を開催しています。全国の多くの小中学校から子供たちの俳句が寄せられ、入選句に対しては表彰が行われます。私も常連の来賓として参加させていただいていますが、この会に参加するとなぜか心が洗われるような気がします。
それは、世界一短い文学である俳句に子供たちが込めた思いが新鮮で純粋で、大人では到底創作できない内容が盛り込まれているからです。小学生の部の小林一茶大賞は「ズルしても当たらなかったスイカ割り」(新潟県沼垂小6荒木良友さん)、中学生の部の大賞は「青春は何をすべきか除夜の鐘」(愛媛県愛光学園中3安元遼太郎さん)の句は、子供ならではの感性です。小学生の部の信濃町教育委員会賞を受賞した大分県大在小6馬見塚沙龍さんは、「平和とはおいしい水が飲める夏」との句を詠んでくれました。ウクライナ、パレスチナなどの戦争地域の社会インフラの破壊の現状、能登半島地震の被災地でもいまだに断水が続いているご家庭があることを思うと、我々が普通に享受している水道の供給も、国が平和であることを大前提としていること、今の状態は「当たり前ではないと」を子供自身が感じてくれていることに、ある意味で安堵しました。
全国小中学生俳句大会の選者の一人である大谷弘至さんからは、ちょうど200年前の文政7年元旦に一茶は地震を経験し、その折に、「世の中をゆり直すらん日の始」との句を詠んだとのお話を伺いました。この句には、「地震は起きてしまったがみんなで協力して支えあって世の中をより良いものにしたい」との思いが込められています。私も過日、奥能登の被災地の皆様の声を伺う中で、奥能登の皆様の気持ちにも通じるものがあるものと心にストンと落ちるものを感じました。
実は、小林一茶は、文政7年元旦の地震の前の年、奥さんと息子を亡くしています。その前にも二人の息子、長女を亡くしています。江戸末期の災害多発の時代、衛生状態も良くない中、厳しい環境の中で人生を送っていたのです。その中で、不幸に追い打ちをかける地震さえも、「世の中をゆり直す」と前向きに捉える心の持ちように感服する次第です。
私は、来賓あいさつの中で、この点に触れ、このような俳句大会の開催を一番喜んでいるのは、小林一茶翁その人だと申し上げました。厳しい生活環境の中で、俳句に人生の思いの神髄を注ぎ込んだ小林一茶の思いは、没後197年たった現在にしっかりと引き継がれています。そしてそれは、日本の文化遺産であり、生まれ在所の信濃町の資産でもあります。
実は、俳句を世界文化遺産に登録しようという運動があります。私のそれを推進する議員連盟の一員として微力ながら活動をしています。それは過疎地域の信濃町により多くの方々に来て頂くためでもあります。