理念・政策・メッセージ
2024.04.09
「中山間地の奈川の再生を議論」
〜制度と実践のつなぎ〜
私は、自身の選挙区事情を踏まえ、過疎対策、中山間地対策、若者の地方回帰を政治的主張のメインテーマとして政治活動を行って参りました。そのために、自民党過疎対策特別委員会事務局長、人口急減地域対策議員連盟事務局長、山の日議員連盟事務局長、スキー議員連盟事務局長、最低賃金一元化推進議員連盟事務局長など、地方を元気にするために政治的組織の実働部隊の当事者として汗をかいてきました。その活動の結果として、過疎新法の成立、特定地域づくり事業協同組合の制度実現、「山の日」を祝日とする法改正、最低賃金の引き上げと都市と地方の格差縮小といった取り組みを積み上げてきました。
そうした活動を実現してきた私の原動力は、地方に若者が喜んで戻ってこれるような環境整備を行うことこそが私の使命だとの信念です。「山の日」を国民の祝日として実現したのも、それを制度化することで、中山間地域の山岳地域に対する国民の皆様の関心を高めて地方を元気にしたいとの思いがありました。
他方、制度だけを作っても、地元は動きません。必要なことは、制度を活用して誰がそれを実際に実行するか、なのです。過疎対策にしても、特定地域づくり事業協同組合にしても、活用可能な制度はできていてもそれを現実に実行する人材・チームが見つからないという現実があります。
こうした問題意識に悩んでいる折りに、自ら手を上げてくれる人が現れました。一人は、日本農業大賞を受賞した「かまくらや」の前社長の田中浩二氏です。全くの異業種から農業分野に参入された田中氏は、国産の食料確保が必要になる中で農業後継者が少ない現状を憂い、農業従事者でも週休二日を確保し若者が農業に喜んで参入できる環境を作るために農業法人「かまくらや」を設立しました。耕作放棄地を再生し、現時点で32名の社員のうち24名が新卒農業従事者として「かまくらや」で頑張っています。農福連携にも取り組み、多くの障害者の皆様が障害者年金に加え追加的な収入を得ています。その取り組みが日本農業大賞の受賞の栄につながりました。
その田中氏は、自身が60歳になったことを契機に、軌道にのった「かまくらや」の運営を若手後継者に委ね、自分自身は単身で松本市奈川地区に移住しました。奈川地区は松本市内にありますが、市街地まで一時間かかる山の奥にあります。そこで地元の皆様が辛うじて続けてきた営農を継続するためにNPO法人「アグリ奈川」を設置しました。田中氏の体験に基づモットーは、上から目線でこれをやるべきだと地元に言っても長続きしない、地元の皆様が主体的に奈川のことをどうするか考えてもらわないとだめだ、そのためには自らが奈川の住民として移住し奈川の皆様と同じ目線に立ち生活体験を共有しなければならない、との信念に基づくものです。田中氏は、市議会議員並みに奈川の全地区を周り、車座集会をこなし、住民の皆様にNPOへの出資を依頼し、住民自らが当事者意識を持って奈川の農業の維持発展を考えてもらう対応をしています。
私も田中氏のこの活動に触れ、自らの琴線が共鳴しました。これまで代議士として中山間地を応援するために幾つかの制度は作ってきましたが「笛吹けど踊らず」という現実に打ちのめされてきました。田中氏の自ら飛び込むという実践に触れ、田中氏とのコラボを田中氏に願い出ました。田中氏の取り組みに対し、全面的な支援を行いたいと考えています。過疎対策施策の当てはめ、特定地域づくり事業協同組合の奈川での設立など田中氏の実践を後押しするための支援を行っていく決意を伝えました。そしてそのために、私と長年政治活動を共に行ってきた赤羽俊太郎という政策通もコーディネーター役として紹介しました。
「類は友を呼ぶ」という言葉がありますが、この田中氏の活動に呼応するように、奈川の隣の乗鞍地域に移住したばかりの明治大学准教授の小田光康氏が、田中氏の活動に共鳴し切磋琢磨の協調を行っていただけることになりました。東大山岳部に所属していた小田氏は、乗鞍にある東大山岳部のヒュッテの活用を念頭に、中山間地域をなんとか元気にしたいとの思いを胸に、4月8日に乗鞍に移住した方です。タイの少数民族がケシ栽培で疲弊した地域をコーヒー栽培への転換で立ち直った現状をフェアートレードの手法で支援してきた実践を踏まえ、縁のある長野県の中山間地も再生したいとの思いのある方です。
田中氏、小田氏と私の意見交換の中で、どのような農作物が奈川に相応しいか、地域の皆様をどのように巻き込むのか、やる気のある若者をどのように奈川に誘うのか、奈川の優れた自然環境をこどもの教育に生かせないか、デジタルノマドの可能性、こどもの域内留学の可能性、小水力発電により再エネの農業利用も大事だといった話題で盛り上がりました。最後は、それを支える人材確保が大事だとの話に落ち着き、そのための特定地域づくり事業協同組合の設立が当面必要だという話になりました。臥雲松本市長も事業協同組合の設立に理解を頂いており、早期の体制整備が期待されます。田中氏の思いを支えるために奈川の農業を支えてきた中野清美氏が「アグリ奈川」の副理事長として理事長の田中氏を支える体制ができあがっています。
自ら議員立法で作った制度とその実践の組み合わせを、自分自身の選挙区内で支援する幸せを噛みしめています。