理念・政策・メッセージ
2022.08.15
「各地の原発関連施設を訪問して」
〜原子力防災担当副大臣として現場視察〜
私は2021年の原子力防災担当内閣府副大臣に就任以来、できるだけ多くの原子力発電所、その関連施設、所在市町村を訪問し、現場の目線で原子力防災対策を考えてまいりたいと考えてきました。玄海原発、女川原発、伊方原発、浜岡原発、東海第二原発、HTTR(高温工学試験研究炉)、そして直近では2022年7月末には青森県六ヶ所村を訪問し、六ヶ所オフサイトセンター、原子力防護施設、日本原燃株式会社の六ヶ所原子燃料サイクル施設を視察させていただきました。万が一、原子力事故が発生した場合には、私の今のポストの内閣府副大臣が現地対策本部長としてオフサイトセンターで現場指揮を執ることになるのですから、職責は重大です。そのような事態にならないことを祈りつつ、予め現地のオフサイトセンター、そして原子力発電関連施設をしっかりと見てその機能を理解しておくことは、極めて大事なことだと理解しています。
内閣府副大臣に就任前にも、東海第一原発、福島第一原発、浜岡原発を視察する機会はありましたが、原子力防災担当副大臣としての立場で視察に臨むことは、別次元の緊張感を覚えます。運転休止中の原発視察の際には、原子炉建屋内に入り原子炉格納容器の至近まで案内され、その際のセキュリティチェックの厳重さを実感します。
現在全国の原発では、福島第一原発の事故を教訓に、二度とこうした事故を起こしてはならないとの強い決意のもと、原子力規制委員会の定めた新規制基準にのっとり、巨額の資金を投入して二重三重の安全確保工事を行っています。各地の原発を訪問するとまるでビルの工事現場にいるような錯覚に陥ります。
今回訪問した六ヶ所村の原子燃料サイクル施設は、日本全国の各原発に、日本原燃の施設で濃縮したウラン燃料を供給し、全国の原発から出た使用済み核燃料を再処理し、MOX燃料として再び原発に供給する役割があります。併せて、高レベル放射性廃棄物を貯蔵管理し、低レベル放射性廃棄物を埋設する役割があります。使用済み核燃料の再処理の際には、プルトニウムが精製されることから、原爆の材料ともなりうるその取り扱いは特に国際的査察の対象になっており、施設のセキュリティ対策もより厳重になっています。
これまでは、地球温暖化対策の観点から化石燃料依存の電力供給の在り方が問われてきましたが、最近ではロシアによるウクライナ侵略をきっかけに化石燃料の供給制約、その結果としての価格急上昇により、改めてエネルギー安全保障の観点からの原子力発電の位置づけが高まっています。そして、そもそも原子力燃料を我が国が自前で確保していくことの重要性が高まってます。また、世界中でロシアからのウラン燃料の供給不安から、高度なウラン濃縮技術を有する日本原燃に改めて注目が集まっている現状もあります。振り返ってみれば、石油ショックをきっかけに、わが国での商業用原発の導入が本格化したことは歴史的事実であり、ロシア侵略が世界の化石燃料の供給に不安定感をもたらしたことの歴史的意味の大きさを感じざるを得ません。
日本原燃視察では、増田尚宏社長、山田立哉フェロー、槙信弘執行役員、大久保哲朗安全推進部長、相澤文雄東京支社長のご案内を頂きましたが、750haの広大な敷地に所在の日本原燃はエネルギー安全保障の観点からより重いミッションを担うとの強い覚悟がひしひしと伝わって参りました。
原子力防災担当内閣府副大臣としては、万が一の際の住民避難、安全確保の万全を図る職責がありますが、そうした一連の対応を十全に尽くしたうえで、わが国のエネルギー安全保障が適切に確保されていくことを心から願う視察を続けています。