理念・政策・メッセージ
2021.01.16
「今後の木質バイオマス発電・熱利用」
〜2050カーボンニュートラルに於ける木質バイオマス利用の位置づけ〜
令和2年末に菅総理大臣から2050年カーボンニュートラルの政策目標が示され、再生可能エネルギーに対する期待と関心はこれまで以上に高まっています。その中で、次期エネルギー基本計画における再生可能エネルギーの大胆な導入が求められています。再生可能エネルギーの中でも地域経済への貢献度が特に高く地方創生への波及効果の大きい木質バイオマス発電については、特に重点的な位置付けを行う必要があると考え、我々は有志で木質バイオマス・竹資源活用議員連盟(河村建夫会長務台俊介事務局長)を設立し、これまでその実態、振興策を議論してきています。
議員連盟の議論も受ける形で、農林水産省及び経済産業省により「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」が設置され、令和2年10月には報告書が提出されています。この中では、木質バイオマス燃料の供給元としての森林の持続可能性の確保と木質バイオマス発電の発電事業としての自立化を両立させるため、課題解決に向けた方策を検討すべく木質バイオマス発電における各種論点について一定の指針が示されています。
一方で、この報告書の提出後に菅総理から2050年カーボンニュートラルの政策目標が示されたことを踏まえ、木質バイオマス発電における課題解決を更に推進する必要が高まっており、議員連盟としては今後の木質バイオマス発電等に関し、更なる踏み込んだ提言をまとめたところです。
以下ではその提言をかいつまんで解説します。政府においても今後のバイオマス発電、熱利用の飛躍的向上に当たっての考える視点として頂けることを期待するとともに、議員連盟としてもそれをフォローしていきたいと考えています。
1.エネルギーミックスの考え方では、2030年のバイオマス発電の導入水準が総発電量の3.7〜4.6%程度、602万〜728万kWと設定されています。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの大量導入が必要となる中で、バイオマス発電についても、バイオマス資源大国の我が国のバイオマス燃料の賦存量を踏まえた持続可能性確保のあり方や、将来の自立化への道筋の明確化等の検討を早急に進め、再生可能エネルギーの一翼としてふさわしい導入水準や将来像を見据え、令和3年に改定が見込まれる次期エネルギー基本計画においては数値目標の大胆な引き上げを検討するべきです。
2.2017年にFIT制度の調達価格が引き下げられる直前の「駆け込み認定」により、バイオマス発電のFIT認定量は2030年エネルギーミックス数値目標の約2倍となっています。この背景には、一般木材等・バイオマス液体燃料区分においてFIT認定を受けたバイオマス発電所の7割以上が、パーム油、PKSそして輸入木質バイオマスといった輸入燃料を主に利用することを想定している実態があります。FIT制度では、その支援の前提として、「持続可能性」の確保を要件としていますが、そのためには食料競合の懸念払拭、ライフサイクルGHG排出削減や合法性確認など更なる持続可能性確保に向けた明確な基準を早期に策定し、本来のFIT認定の姿を回復すべきです。
3.残念ながら、国産木質バイオマスのエネルギー利用は伸び悩んでいます。エネルギー自給率向上、災害時におけるレジリエンスの向上、森林整備・林業活性化といった観点から、輸入材利用を抑制し国内材利用を促進することは必須であると考えられますが、森林資源の持続的活用を前提とした国内木質バイオマスの燃料費低減や安定供給確保が大きな課題として立ちはだかっています。「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」報告書では、建材用途を主とした森林活用モデルだけでなく、燃料用途を主目的とする新たなビジネスモデルの実証を検討することとしていますが、早期具体化の仕組みを整えるていかねばなりません。
4.木質バイオマス発電だけでエネルギー効率を高めることには限界があり、その熱利用・熱電併給の普及は必須ですが、それが思うように進んでいません。報告書中では「地域内エコシステム」構築の実績をベースとした導入支援、まちづくりや地方創生、地域循環等と関連する省庁との連携が検討されていますが、早急に具体的な措置やロードマップの提示を行っていかねばなりません。
5.木質バイオマス活用はそれを支える体系だったシステムが必要であることから、特に、関係する地方における林業・木質バイオマス発電事業の自立化促進のための人材育成の仕組みを整えることが必要であり、具体的な検討を行う必要があります。また、地域人口の急減に直面している地域において、農林水産業等地域に根差した産業の担い手を確保するための特定地域づくり事業協同組合制度の活用も検討できるはずです。
6.FIT制度に基づく買取期間終了後の関係者共倒れリスクを回避するためには、今の時点から、買取期間終了後を意識して、木質バイオマス利用の大前提となる「持続可能性」、「コスト低減」、「安定供給」が成り立つ事業体制の構築を進めていく必要があります。こうした観点から、木質バイオマス発電の供給側と受給側双方の視点を取り入れながら、長期安定的な事業継続を可能とする事業や体制の在り方の具体化やその実現に向けた方策の検討を進めるべきです。
7.河川伐採木・災害流出木等の資材のバイオマス発電への活用は徐々に進みつつありますが、FIT制度への活用が可能であることが現場において十分に認知されていないのが実態です。関係省庁が協力し、これら原材料の木質バイオマス発電活用フローについて改めて周知を図るべきです。
8.農山漁村に賦存するバイオマス資源(稲わら、もみ殻、麦わら等)は現状では飼肥料や敷料、地力増進に資する農地へのすき込み等に利用されることが多いものの、一部は野焼きの対象ともなりPM2.5の発生源の一つであるとの指摘がなされています。海外の事例ではこれらの資源をバイオマス発電・熱利用に活用し地域循環型の仕組みを構築しているケースもみられます。これらの潜在的な資源について、食料競合の排除や既存用途との調和を図りつつ、再生可能エネルギーに結び付ける仕組みを早急に構築すべきです。