理念・政策・メッセージ
2011.10.06
「地域を元気にするサイクルトレイン」
今年の夏は、大震災に伴う消費の落ち込みや経済活動の停滞が生じたが、安曇野や松本の観光に関しては、NHKの朝のテレビドラマ「おひさま」の影響などもあり、大勢の観光客でにぎわった。6月30日の松本の地震で一瞬観光客の足が遠のくのではないかとの心配もあったが、関係者の努力により、「風評被害」を撥ね退けることができた。安曇野のワサビ田周辺を自転車に乗って散策する都会からの訪問者をたくさん目にした。
その中で、一団のサイクリストが安曇野を南北に移動しているのを何度も目にした。夏でも涼しく、空気のうまい安曇野を自転車で快走するのはこの上ない爽快感、開放感があるはずである。因みに、私も少し高級な自転車を購入し、安曇野の自宅と松本の間の「自転車通勤」を試みている。
さて、この自転車、天候によっては使い勝手が悪い面もある。都会からこの地をサイクリングで訪れる若者も、雨の日のサイクリングは気の毒である。長距離のサイクリングは相当の覚悟も必要である。
もっと自転車を手軽に有効に活用できる工夫がないか、様々な取り組みがある中で、旧知の白馬村在住の若手企業人から、「自転車を列車に積み込む」ことは検討できないか、とのアイデアが寄せられた。
「白馬村は、冬はスキーのメッカだが、夏にも観光客を誘致したいとの思いがある。その白馬村で最近自転車で村内を走る人が増えており、より多くの人に自転車で美しい白馬村を走ってもらえるようにできないかとの思いがよぎった。その場合、自分の普段使っている自転車で快走してもらう方が愛好者には好ましい。しかし、都会から白馬村まで自転車で来いというのは酷である。仮に中央本線や大糸線でサイクルトレインが走ることになればそれが可能になる」、とのアイデアである。
自転車の愛好者が非常に多い欧州では、自転車を抱えて列車に乗り込むことはごく当たり前の風景である。日本ではこの取り組みは一般的ではない。地方鉄道や地方のバス会社が、時期を限り、イベント的にサイクルトレインの試みを実施している例はあるものの、日常的にこれを実施するところまでには至っていない。
都会から気軽に自転車を抱えて地方に出かけやすくするために、鉄道事業者は、このサイクルトレインを一般化する手立ての検討を願いたい。国の役所や地方自治体も地域活性化の観点からその支援の仕組み作りに乗り出してもらいたい。この取り組みは、国民の健康づくり、地方の活性化にも必ず資することになるからである。
ごくごく小さな取り組みから様々な地域間交流のきっかけが生じる。サイクルトレインの一般化に向けた検討を促したい。