むたい俊介メールマガジン第249号 2017.06.03
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「衆議院厚生労働委員会での質問」
○厚生労働委員会で質問
平成29年4月28日(金)衆議院厚生労働委員会で質問の機会をいただいた。
私は、これまで予算委員会分科会では、厚生労働省所管予算について質問に立った(その際、大町市立大町総合病院の産婦人科常勤医師の不在について窮状を訴えた)ことはあったが、厚生労働員会に配属されてからは初めての質疑となった。
国の財政における医療費負担という切り口で、運動による国民の健康づくり、たばこによる健康被害防止等を推進するための国の取組の必要性を申し上げた。
以下、私の委員会での質疑を通じて議論されたことを、解説もかねて紹介する。
○持続可能な社会保障財源の議論を
質疑ではまず、今回の質疑の背景となる認識を共有するため、私の生まれた昭和31(1956)年と平成28(2016)年の人口ピラミッド及びそれぞれの年度の一般会計歳出の内訳のグラフを示した。
人口構造を見ると、60年前には数が少なかった老年人口(65歳以上人口)が、今日では全体の3割に迫ろうとしており、それに対して年少人口が非常に先細っている図になっている。一方、歳出の内訳を見ると、そのような人口構造の変化を反映して、昭和31年当時は、歳出の総額が1兆円を少し超える規模で、一般歳出(国債費・地方交付税交付金を除いたもの)のうち社会保障費が13.6%を占める程度だったものが、平成28年度には、歳出の総額は約96.7兆円で、一般歳出のなんと55.3%が社会保障費に充てられている。なお、国債費も相当に規模が大きくなっているが、その大部分は赤字国債であり結局は社会保障財源に充てられているのである。
このように見てみると、日本の社会保障が増大してきて、これからもしていくであろうという事実は、人口構造(老年人口比率)を考えれば、与えられた前提として受け入れなければならない。
厚生労働委員会に所属して議論を聴いていると、当然のことながら、社会保障の充実を訴える声が特に強い。ただ、その一方で、持続可能な社会保障のあり方について、財源論を踏まえたしっかりとした議論をしていくということも、我々政治家の責任ではないかと思う。介護保険の見直しを初め、厚生労働省が提出している法案にはそうした思いがにじんでいると思うが、やはり自己負担の拡大といったような各論の議論になると、なかなか反発も強くて、その作業が容易なことではないところにこの問題の難しさがあると改めて感じる。
○健康長寿で医療費も少ない長野県
都道府県ごとの「平均寿命」と「一人当たりの医療費」の分布図を見ると、長野県は一人当たり医療費がかなり少ない中で全国一の長寿を実現していることがわかる。これは私も誇らし思う。
もし仮に、日本全国が長野県のような姿になったら社会保障費は相当低減するのではないか。厚生労働省によると、さまざまな条件の違いを考慮せずに機械的に試算してみた結果、例えば平成26年度の国民医療費の実績40.8兆円が39.4兆円にまで縮減でき、1兆4千億円節約できるとのことであった。
では、長野県に学ぶことがあるとすれば何か、という問いに対しては、古屋範子厚生労働副大臣は、「国民の健康寿命を延ばしていくためには、国民の皆様一人一人がみずからの健康により一層気をつけていただくと同時に、健康を支え、守るための社会環境の整備も重要」としたうえで、特に「健康寿命延伸都市を目指す松本市では、町づくりの全ての分野が健康を切り口に進められて、身体的、精神的、社会的に健康な都市づくりを目指していらっしゃいます」との指摘があり、「このような取り組みが県民の健康意識の向上につながり、一人当たりの医療費が低いことの一つの要因となっていると考えられる」とのお答えがあった。
なお私は、長野県は兼業農家の比率が日本一高く、サラリーマンを定年退職した後も畑や田んぼの作業する、土に触れ合って季節の変化に応じた生活をするというライフスタイルも長寿につながっているのではないかと感覚的には思っている。
○運動による健康づくり
健康づくりを国民運動として進める取組も重要である。40兆円を超える医療費の中で生活習慣病の医療費が3割に達しているという統計もあり、病気を予防するという考え方が必要だと考える。
厚生労働省では、健康教育、健康相談など、市町村が地域の実情に応じて行う健康増進につながるような施策について、その事業費の3分の1を補助する健康増進事業を実施しているほか、健康増進法に基づいて厚生労働大臣が定めた基本方針に示された「21世紀における第2次国民健康づくり運動(第2次健康日本21)」を推進している。
平成23年からは「健康寿命を延ばしましょう。」をスローガンに、国民全体が人生の最後まで元気に健康で楽しく毎日が送れることを目標とした国民運動である「スマート・ライフ・プロジェクト」も推進されている。適度な運動、適切な食生活、禁煙、健診・検診の受診について、このプロジェクトに参画する3,700の企業、団体、自治体と協力連携しながら、具体的なアクションが試みられている。
そのなかでも、一日の身体活動の時間を今より10分間延ばそうという身体活動の「+10(プラステン)」アクションがいま呼びかけられている。実は、今年の5月に施行となった自転車活用推進法では、自転車の活用による国民の健康の保持増進という観点から厚生労働大臣も推進本部の一員となっているが、自転車の利用は日常的に体を動かす具体例として、この「+10」にちょうどよいのではないかと思う。
私が3年前にデンマークに視察に行ったとき、デンマークでは国を挙げて自転車活用を推進している様子もうかがってきた。その際現地では、自転車活用することで医療費が相当低減されという感触があるとのことであったが、実際に「自転車政策の費用対便益分析」の報告によると、自転車政策を導入した後50年間、費用は約40億ユーロである一方、健康の改善による27億ユーロを含んで全体としては約70億ユーロの便益があると推計されている。
個人が自発的に健康づくりに取り組むことを自治体や保険者がインセンティブで支援するということは、予防、健康づくりの推進の観点からも非常に重要である。
平成27年の医療保険制度の改正によって、個人の健康づくりにインセンティブを提供することが保険者の方々の保健事業として位置づけられた。例えば、ウォーキングなど自治体の健康づくりの取り組みに参加した場合、または住民健診を受診された場合などに、各種コンビニ等で利用可能なポイントを付与すること、またスポーツ施設の利用券、地元の商品券などを提供することを通じて、住民の健康づくりを積極的に支援する自治体は、平成28年度で全国の3割程度にあたる522市町村まで増えている。
○たばこによる健康への害
禁煙が平均余命を延ばすのに効果的だというのは直感的にはわかる。以前あるお医者さんはが、「仮に日本が禁煙を実施したら日本人の平均寿命が2歳延びる」とおっしゃっているのを聞いたこともある。それらにはどのような根拠があるのだろうか。
これに関しては、喫煙者と生涯たばこを吸ったことがない方の平均余命を比べた研究は国内外で報告をされている。例えば、イギリスにおいては、34,000人の男性を50年間追跡した研究あり、喫煙者は生涯非喫煙者と比べて平均余命が10年短かった。また、日本では、広島、長崎の68,000人を23年間追跡した調査があるが、ここでは、喫煙者は生涯非喫煙者と比べてやはり10年平均余命が短いという報告であった。喫煙が平均余命を短縮させているということは科学的には明らかであると考えてよい。なお、我が国の喫煙者率はだいた20%程度なので、前述の「2歳延びる」説もあながち的外れではないかもしれない。
また、受動喫煙も、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中などの疾病リスクを増加させることが科学的に知られていて、国立がん研究センターの昨年の推計によると、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ方が少なくとも国内では年間15,000人とされている。
まさにいま受動喫煙防止に関する政府・与党内での議論が山場に差し掛かった様相だが、私は受動喫煙防止議連の幹事であり、厚生労働省にはできるだけ早い法律提出を期待している側である。
私が昔ロンドンに勤務していた当時、英国もパブで受動喫煙をしない仕組みを導入した。導入当初こそパブが潰れるのではという懸念があったが、その後、たばこを吸わない方もパブに来るようになって、かえってお客が増えたという実例もある。
WHOからの強い要請もあり、東京オリンピック・パラリンピックを機会に、少しでも国際水準に近づける対応を政府にはお願いしたい。
私の要請に対して、塩崎恭久厚生労働大臣からは、WHOのマーガレット・チャン事務局長から正式な書簡を受け取り、長い伝統であるタバコフリーという政策を維持すること、そして特に屋内の公衆の集まる場(パブリックプレーシズ)での喫煙の完全禁止を全国レベルで実施することについて、公式に要請があったとの紹介があった。また、大臣は、北京以降のオリンピック開催地、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオ及び平昌では、いずれも飲食店を含む公衆の集まる場での罰則つきの屋内禁煙ないしは敷地内禁煙という措置をとってきていること、並びに安倍総理も受動喫煙対策の徹底を1月の施政方針演説で述べられたことも挙げながら、「国民の8割を超える非喫煙者、妊娠をされている女性、子供さんたち、がん患者、ぜんそく患者、そして、インバウンドで最近外国人が多いわけでありますから、そういったサイレントマジョリティーの皆様方に、喫煙の自由よりも健康の方が後回しにされないということに意を尽くしてまいりたい。子供たちの未来のために何をするかという問題ではないかというふうに思っております。」と述べられた。
○厚生労働委員会の特徴
厚生労働省は省庁再編の経緯もあり所管分野が広いことで有名であるが、とにかく厚生労働委員会は審査する法律案の数が多い。さらに、法案の中身についても、先にも触れたように各論で意見や立場が対立するものが少なくない。
なお、いまの国会には、水道法改正法も提出されている。私は自民党水道事業促進議員連盟の事務局長でもあり、その審査の際にはもう一度質問に立たせていただきたいと思っている。
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