むたい俊介メールマガジン第177号 2012.08.08
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「米国の危機管理を支える原点」
〜システムの標準化により緊急事態に対処〜
2012年8月初旬、米国テキサス州に所在する危機管理訓練組織を見学する機会に恵まれた。我が国を襲った東日本大震災の大きな教訓を踏まえ、我が国の災害対応の強靭化を図るために何が必要かということを知るための調査の一環であった。
今回の調査対象は、テキサスA&M大学と連携するTEEXという民間組織が運営する危機管理訓練施設と米国空軍が運営するグッドフェロー空軍基地にある消防学校(第312訓練中隊)を訪問するためであった。
日本と米国の防災・危機管理の大きな違いは何かと問われて、私なりの答えは、1,未然の防災に力を入れるのか、災害が起きることを前提に対応を考えるのか、という点が一つ。そして、2,徹底的に標準化を進め、危機管理要員の出来不出来に拘わらず一定の成果が上がるようなシステムを持っているか否か、が二つ目である。勿論もっと多くの相違点はあろうが、私が感じている点はこの二点である。
前者に関しては、我が国では、例えば、原子力事故は起こしてはいけないという観点が強過ぎ、過酷事故と呼ばれる事態が発生する前提でものを考えてこなかった我が国の危機管理意識が大きく問われたのが今回の大震災であった。米国は、ありとあらゆる事態が起こり得る前提で、二重三重に対応策を準備している。核戦争を想定した準備を行ってきたのであるから原子力事故が起きた際の対応も考えてきていることは当然である。
そのような危機管理大国の米国には、事態対応に際して「プロアクティブの原則」というものがある。大規模な災害が起きた場合のトップに立つ者の行動原理であり、彼の国では組織のトップにはこの行動原理が徹底的に叩き込まれる。災害が大規模であればある程、情報がかえって入らない。その際に、トップに立つ者はどのようなスタンスで危機に臨むべきか、という判断基準である。 1つは、「疑わしきとこは行動せよ」、2つは、「最悪事態を想定して行動せよ」、3つは、「空振りは許されるが見逃しは許されない」というものである。
今回の福島原発の事故に際し、最悪事態を想定して日本に技術支援を申し込んだ米国に対し、最悪事態を想定しないで事態の推移を見誤り、支援を断った上に、結果として大きな対応の遅れを引き起きした政府与党の危機管理対応を見れば、我が国の抱える問題の根本がよく分かるというものである。
もう一点は標準化の問題である。米国の国際空港に降り立つと米国社会の多様性が厭というほど目に入ってくる。米国の州によっては使う言葉が異なるという状態も存在している。こうした社会の現状を前提として、国家や社会のシステムを動かすために米国では標準化が進んでいる。
我が国においては、これまで米国の多様性に比較し差異の少ない日本人同士が、「暗黙の了解」といった不文律で社会や組織を運営してきた歴史がある。わざわざそれを文字に書き、多くの人に分かるようにすることをしなくてもこなしてきた実態がある。おまけに、気の利く日本人は他人の権限と不分明な分野も思い遣りの精神で片づけてしまうことも多い。米国の空港乗り継ぎで、入管手続きに手間取り乗り継ぎ便に遅れそうな場合に、係官に事情を話しても「仕方がないじゃないか。おれの仕事じゃない」と乗り継ぎ空港会社に連絡の手間を厭わず取ってくれる人はそうはいない。しかし日本であれば、係官は旅客の為に列に分け入って優先的に対応してくれる。この点は日本の社会の方がよりシステムの間に潤滑油が染み込んでいると思われるが、大規模な災害などが生じ、潤滑油が渇き切った状態が生じないとも限らない。それが東日本大震災であった。
米国の危機管理システムには、NIMSやICSといった標準化システムが全国的に普及している。そのシステムを前提の教育訓練機能が充実している。この標準化システムは全米に普及され、いかなる大規模災害や非常事態が起きたとしても即座に危機管理要員が配備され、事前に叩き込まれた役割分担が適切に果たされる。そして刻一刻変化する状態に迅速果敢に対応できるようにシミュレーションが繰り返し行われる。
ICSと呼ばれる米国の緊急事態管理のためのアプローチでは、緊急事態に際して、施設、設備、人員、手順および通信の統合を可能にし、様々な機関間で協調した対応を可能にし、災害資源利用を計画的に管理するための共通の手順を確立する内容が含まれている。そのためにICSは、起きた事態に対し最も効果的に対応できる対応を予め想定し、縦割りを排除し、現場に最大限の権限と責任を付与するシステムとして非常に有効であるとされる。軍隊から消防に至るまで災害対応を行う各機関にこのシステムが徹底的に叩き込まれるばかりではなく、大規模イベントなどの際にも応用される。
日本には未だこのシステムは導入されていない。個々の災害対応機関の機能や行動は立派でもそれが全体として統合され、調整されない我が国の危機管理の現状を見た場合に、こうしたICSの制度と運用を我が国においてもしっかりと検討する必要があると考える。こうした標準化システムの無い日本では、極めて高度な専門知識が求められるはずの非常事態対応に際し、素人の総理が誤った政治主導を振りかざして災害現場に平気で介入し、現場対応を混乱させることにもなりかねないのである。
テキサスにあるTEEXの災害訓練施設とグッドフェロー空軍基地の消防学校はICSに基づく教育訓練の世界水準の機能を有する機関であり、「国土の強靭化」を図るためには、こうした人を動かすシステム構築に向けての検討を 日本政府は本腰を入れて行うべきと考える。グッドフェロー空軍基地の上級教官も、「日本にICSが存在すれば、誤った政治介入の抑止力になる」と語っていたのが印象的であった。
自由民主党長野県第2選挙区支部長
務台 俊介
[活動報告より]□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
8月4日 大町、麻績、松本などの各地の夏祭りに参加
https://www.mutai-shunsuke.jp/activity/1208.html#120804
[お知らせ]□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
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むたい俊介ニュース第10号 2012年夏号が完成しました。このニュースをお配り頂ける方、ご入用の方はこちらのリンクからダウンロードいただくかもしくはこのメールにご返信ください。
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5月13日に安曇野市豊科に麻生太郎元総理をお迎えし、講演会を開催しました。800名近くの皆様にお集まりいただき、大盛況でした。麻生先生からは、安曇節のご披露に始まり、今後の政局の見通しと経済施策のあり方について講演いただき大変盛り上がりました。ご参加いただいた方々に心から感謝申し上げます。
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