むたい俊介メールマガジン第109号 2011.04.13
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「非常時の行動原理」を知らない政権による「政治災害」
〜空振りは許されるが見逃しは許されない〜
震災対応で評価を上げた人々と評価を下げた人々の差が際立っている。消防、警察、自衛隊、医療関係機関といった現場の初動機関は大変な評価を得た。DMATと呼ばれる災害時医療チームは、発災直後各地から現地に駆け付け、応急救護の任務に当たった。松本市の相澤病院のチームは、発災のその日に既に現地に駆け付けている。その調整員を務めた相澤病院所属救急救命士の中込悠氏の現地滞在一週間の話を聞いたが、現地の問題点と課題が的確に整理・把握されていた。
消防機関は、この日の為に備えていた全国の緊急消防援助隊が、早いタイミングで整然と現地入りし、被災者救助に大きな力をふるった。本来の消防の役回りではない福島第一原発の放水に関しては、東京消防庁の皆様が、ハイパー・ポンパーという連続的に大量の水を注入できる設備を用いて、被ばくの危険と戦いながら、国民の期待に応える活躍を行った。
地方自治体の対応も組織立ち整然としている。例えば茨城県は、JCO臨界事故の経験を踏まえ、冷静でスマートな被災対応を行い、特に原発災害に対しては、慌て、狼狽する政府をむしろたしなめながら対応している感がある。
自衛隊が大量の部隊を投入し、救助、遺体捜索に献身的な活躍をしたことも忘れてはならない。米軍第七艦隊も空母ロナルド・レーガンを擁し、「トモダチ作戦」を遂行してくれたことも、日本国民に日米同盟に意義をしっかりと脳裏に刻み込ませた。
各種ボランティア組織が、多方面の活躍をしたことは言うまでもない。阪神大震災以降の災害時ボランティアの成長は目を見張るものがある。
このように、個々の災害対応組織は、本来の機能を発揮し、国民の尊敬を集める対象となっているのに対し、本来これらの機能を束ね、支援すべき政府・与党の評価は著しく低い。
大規模地震、巨大津波に加え、運悪く原発の被災という事態があったことを差し引いても、政権中枢の危機管理能力が大きく問われる事態を招いたことは紛れもない事実である。原発問題が注目を集めるに至り、官房長官は原発一本やりの対応に特化してしまった。本来全体を見通すべき立場の人が、各論にのめり込んでしまった。しかものめり込んだ結果は、その見通しの甘さから、国内ばかりか国際的な顰蹙を買う対応となってしまった。
一生懸命やっていることは分かる。しかし、如何にもバランスと判断が悪い。無理もない。危機管理については、全くの素人なのだから。素人ならば素人なりに、専門家に任せなければならなかった。しかし、民主党政権は「政治主導」を標榜していた政権であった。国家の最大に危機において、意気込んで自ら政治主導を行おうとした。そして、このことが国家的危機に臨み、その危機を更に深刻なものにしてしまった。
本来の政治主導とは、政治家はどっしりと構え、それぞれの専門分野の専門知識を持った人たちの知見を最大限引き出し、その持つ能力を最大限発揮させることにより国家的利益を守ることにある。「専門知識を持った人」とは、多くの場合には官僚組織であることもある。しかし、民主党政権は、その官僚組織を敵視した。事務次官会議を廃止し、各省間の調整機能を著しく粗相した。各省に入り込んだ政務三役といわれる政治家群がその役目を果たせばよかったが、お勉強中の彼らにその能力を期待するのは無理であった。そのために、国の最大の危機の局面において、官僚組織が政治主導の元に、「指示待ちの姿勢」に立ってしまった。その隙間を運命の神は無慈悲にも突いた。
官邸の指示がなくても各省庁は被災者支援・復旧策を準備していた。しかし政務三役の「政治主導」が障害となった。官邸・政務三役の機能不全で対応が遅れた。政務三役に無断で仕事をやってはいけない「不文律」下でも、叱責覚悟で官僚機構は黙々と対策を練ったが、政治主導下での実行ができない。結果として、非常災害対応の際に、政治主導下の政治不在という「政治災害」の様相を呈してしまった。
福島第1原発に対する水の投入の順番を見てもそのことが分かる。各省間の情報共有・調整が適切にできていれば、投入の順番は、「自衛隊のヘリコプターによる散水」→「警察、自衛隊の消防車による放水」→「消防機関が有するハイパー・ポンパーを活用した連続大量放水」という「効果の薄い」の順番ではなく、一刻一秒が争われる中、効果の大きい逆の順番で行われるべきであったことは明らかである。判断が逆であったのだ。調整が未熟なために、十分な情報共有がないままに、本来無為に過ごしてはならない貴重な時間が浪費されてしまった。福島第1原発のその後の惨劇は、初動判断と対応のミスによるところも大きい。
危機管理コンサルタントの青山繁晴氏は2009年の衆議院選挙の前に私に語った「予言」がある。「民主党政権が実現すると、危機管理が出来ないので大災害や大規模テロが起きると必ず大失敗することになるだろう」、というものだ。私もまったく同じ思いを抱いていたが、まさかこれほど鮮やかにやってくれることになろうとは思いもよらなかった。しかもその失敗が、わが国の歴史上最大規模の災害発生の折に行われることになろうとは。「失敗する可能性のあることは必ず失敗する」というマーフィーの法則を想起せざるを得ない慙愧に堪えない心境である。
米国には、危機管理に関して、「プロアクティブの原則」というものがある。大規模な災害が起きた場合のトップに立つ者の行動原理であり、彼の国では組織のトップにはこの行動原理が徹底的に叩き込まれる。災害が大規模であればある程、情報がかえって入らない。その際に、トップに立つ者はどのようなスタンスで危機に臨むべきか、という判断基準である。
一つは、「疑わしきとこは行動せよ」、二つ目は、「最悪事態を想定して行動せよ」、三つ目は、「空振りは許されるが見逃しは許されない」というものである。
今回の原子力災害に関する米国の対応を見ていると、このプロアクティブの原理が貫徹していることが分かる。しかし日本はどうであろうか。結果から見ると、「疑わしいので行動せず」、「大丈夫だろうという楽観の下に行動し」、「(機材投入の)時機を逸し、決定的なチャンスを見逃した」ことになったことは否定できない。
あまつさえ、菅総理が、原子力発電所が深刻な事態になっていたまさにその時に、周囲の反対を押し切って現地入りし、その総理訪問に現地が対応せざるを得ない状況を作り出したためにかえって事態が深刻化したとされる事態を見るにつけ、この政権は危機管理を行うどころか、その存在こそが危機の元凶ともいえる実態となっている。
非常時の備えを怠り、非常時に頼りにすべき組織を痛めつけ切り刻んだ付けが、わが国最大の危機管理が必要とされる局面で、その矛盾を露呈したことは否めない事実である。
しかし、ここにきて、問題点ははっきりとした。我が国政府の弱点は、トップマネージメントにある、ということである。個々の機関の動きは称賛されこそすれ、非難を加えるところはない。非難さるべきは、政治家の資質とその対応である。
これを是正するために、我々は、危機管理能力を有する政治家の資質を高めることが必要である。しかし、仮に政治家がトップマネージメントの面で機能しない場合でも、的確に危機管理対応をこなせる制度・組織を作り上げなくてはならない。
米国にはFEMA(連邦危機管理庁)という組織がある。クリントン政権下で大いに機能した組織がブッシュ政権下でその機能の低下を指摘された。職員数2600名、災害予備役4000名を擁するこの政府の危機管理組織の機能は大いに参考になる。他方で、FEMAに相当するわが国の危機管理組織は、職員が非常に少ない中で内閣官房、内閣府、消防庁に分かれ役割分担と調整機能が不分明である(注)。
今回の大反省を踏まえ、我々は真面目に今後更に見込まれる大規模災害に備えた危機管理体制の在り方についても幅広い知恵を集めた議論を始めなくてはならない。
(注)「高めよ!防災力」(ぎょうせい 務台俊介 レオ・ボスナー)中、「FEMA専門家から見た日本の危機管理の問題点」参照
自由民主党長野県第2選挙区支部長
務台 俊介
[活動報告より]□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
4月9日 茨城県県庁、大洗町を訪問。津波、原子力災害への対応をお聞きする。
https://www.mutai-shunsuke.jp/activity/1104.html#110409
[ustream定期放送]□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
USTREAM
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震災直後から現場に行かれた救急救命士、ボランティア活動のリーダー、商店街の若手経営者震災へのチャリティーイベントを企画した女子高校生など様々なかたをゲストにお迎えし務台俊介と対談する模様を放映しています。
是非一度、ご覧ください。
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