むたい俊介メールマガジン第98号 2011.01.13
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「公設市場の活性化を夢想する」
〜住民自身の出資を仰ぐ手法〜
正月に松本市公設市場(いちば)の初市に顔を出した。直販や系列化の進展で市場を経由しての取引が随分と下火になっている旨、青果と魚の両方の市場関係者が溜息をつきながら話をするのを聞く機会が多くなっている。直販の方が中間マージンを省け、消費者は喜ぶとのメリットは勿論ある。しかし一方で、市場の機能は引き続き重要であることは事実である。直販や系列のルートに全ての農林水産物が乗れるわけではない。多くの市場関係者の前で品物が捌かれてゆくことで生産者の作ったものを需要のあるところに行き渡らせる機能が市場の機能である。そのような意味では、直販や系列ルートは、謂わば、クリーム・スキミング(良いとこ取り)という位置づけにもなる。世の中に、直販・系列ルートしかないとしたらどうなるか。そのルートから漏れる生産者は生きて行けない。謂わば、市場は流通のセイフティーネットとも言い得る。
直販が消費者に一定の支持を得ていることは認めつつも、これが勢いを増すことで市場機能を阻害することになるとしたら、それは忌々しき問題でる。健全な青果・魚市場の在り方を考えなければならない。
初市の折りに、同市場の一角で代々漬物を商っている友人と話す機会があった。彼も市場の衰退を憂えている一人である。二人で話をする中で市場をどの様に盛りたてて行くべきかという処方箋について話が盛り上がった。
我々の一致した認識は、「市場にいると楽しい」という点である。この楽しさをどの様に多くの人の間で共有し、市場の活力に結び付けるか、ということが問題解決のヒントとなりうる。そして、市場をどの様にして多くの人に楽しんでもらうかがその手法として考えうる。築地市場の周囲には一般の客を集める食堂街が林立し活性化している。松本市公設市場にもその様な機能を集約することはできないものか。
欧州には、産業遺産(Industrial Heritage)という概念で歴史的機能を果してきた産業関連施設を観光施設として利活用するシステムがある。昭和40年代から機能してきた松本市公設市場を、現代風にその機能を改装し、観光・教育施設としての位置づけも加え、機能アップすることを検討したらどうか。松本市の中心部から無料バスのシャトルサービスを頻繁にし、利便性を増すことを考えてもよい。公設市場を小中学生の社会見学のメッカとしてもよい。
そしてその際に、この施設が地域の皆さんの食を支えてきた機能に着目し、一種の地域産業遺産としてとらえ直し、その整備に当たっては、広く地域の皆さまに出資を仰ぐことを検討したらどうか。自らが出資者となることで、定期的にその施設を一定の頻度で訪問する気持ちになってくる。
住民の立場も、全てを公に委ね、自らはサービスの受益者として振舞うのではなく、自らがその経営に関心を持つような位置づけを住民の皆さまにも与える。そういう観点があれば、一過性のアイデア倒れでプロジェクトが頓挫する可能性も小さくなるのではないか。
2010年末に、諏訪市の老舗デパートの丸光が閉店するとの報道に接した。諏訪の住民は、デパートが無くなると、特に諏訪駅前から生鮮食料品を売る場所が無くなるのでその機能を維持してほしい旨要請しているとの報道に接した。諏訪市の住民の気持ちは分かる。しかし、デパートが閉店するのは諏訪市の市民自身がデパートの利用頻度を少なくしたからである。サービスの受益者としての立場だけでものを考えると、不便を託つだけの話になる。私は、生鮮食料品の販売機能を持たせるのであれば、住民自身が出資し、その機能を自分たちで作り出し、オーナーとしてその経営を自ら心配していくという気持ち必要ではないか。
「官と民」という区分がある。松本公設市場の設置主体は「官」である。諏訪丸光の設置主体は「民」である。「官と民」との双方ともに、地域住民自身は第3者としてサービスの受益者としての位置である。住民自身が主体的に設置主体に関わる、つまり、広い意味の「公」という考え方がより重視されて然るべきではないか。そしてその手法として、住民自身の出資という手法が検討されて然るべきではないか。地域住民の生活を自らが主体的に支える生活防衛の手法を柔軟に考えて行くべき時代に立ち至っている。1400兆円に上る個人金融資産の使い道は足元にこそあるのである。
自由民主党長野県第2選挙区支部長
務台 俊介
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