むたい俊介メールマガジン第93号 2010.12.09
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「低所得者向け住宅政策の効果的展開」
公営住宅に入りたいのだがという相談を持ちかける機会が多くなっている。松本市内の私が通った高等学校の南に県営住宅があるが、一定水準のマンションのような趣があり、周囲の住民の皆さんからは羨ましがられている。私が相談を受けるのは、例えばあのような公営住宅には入れないかというものである。
最近の不況の中、家庭収入の低下や高齢化の進展により、公営住宅の入居希望が増え、応募倍率は非常に高い。国は、応募倍率を引き下げる為、入居基準である月収を下げてきている。しかしそのために子育て世代である若い世帯が公営住宅から締め出され、公営住宅が極端な高齢コミュニティーとなってしまうという矛盾も生じている。
一方で、民間住宅は余剰である。不況で外国人労働者が去った地方都市では空き家となった民間賃貸住宅が大幅に増えている。
我が国では、自治体が民間住宅などを借り上げ公営住宅として貸し出す借り上げ公営住宅制度を制度としては導入しているが公営住宅に占める割合は1%に過ぎない。
不足している公営住宅と余っている民間賃貸住宅。この需給ギャップを埋める仕組みが必要ではないかと思われる。
私が滞在した英国では、低所得者への家賃補助が充実している。全額国費で賄う家賃補助制度では全世帯の18%がこの補助を受給している。更に英国では“righttobuy”(注)という仕組みがあり、公営住宅を居住者が有利な価格で購入できる制度が用意されている。借家ではなく持家購入を促進することで、コミュニティーも元気になるとの報告がある。
施設を公共が作り、それを貸し付けるという仕組みは、ある意味で硬直的であるように思われる。初期投資に巨額な金がかかり維持費も馬鹿にならない。公費を多量に投入しても必要な量の公営住宅を提供できないため、入居できた人と入居できない人の公的支援に大きな差異が生じる。公営住宅への入居は「宝くじにあたるような感じ」とさえ言われる。
自前で公営住宅を整備する仕組みを大きく改め、現在の公営住宅を入居者に販売できる仕組みを導入し、公営住宅の需要が大きいところでは借り上げ制度を導入し、更に抜本的には、低所得者への家賃補助の仕組みを検討していく必要がある。
何故、日本では、自前で公営住宅を作る制度がこれまで一般的であったのか。私の私見では、公営住宅の所管が国土交通省(住宅局)にあったことが理由の一つではないかと感じている。建築職の公務員がそこで仕事をしている。通常彼らは立派な建物を設計することが職業倫理だと考える。一方で、低所得者への家賃補助の仕組みは我が国の制度にあっては生活保護制度の枠組みの中に入っており、生活保護の所管は厚生労働省である。つまり、低所得者向けの住宅政策の所管が分かれているのである。このことが、低所得層への住宅提供という政策課題について、硬直的な対応を行ってきた大きな原因の一つのように思われる。社会保障制度の効率的な運営に向けて、住宅政策も機動的に展開できる体制強化が望まれる。
(注)” right to buy” 制度解説の英国ホームページ
http://www.direct.gov.uk/en/HomeAndCommunity/BuyingAndSellingYourHome/HomeBuyingSchemes/DG_4001398
自由民主党長野県第2選挙区支部長
務台 俊介
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