むたい俊介メールマガジン第83号 2010.10.01
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「「尖閣諸島問題」に見る日本国の免疫機能低下」
最近中国出張から帰ったばかりの松本市内の自動車系中堅製造業の社長から興味深い話を伺った。
一党独裁の中国の体制と日本の様な民主主義国家のメリットデメリットを比較しながら、中国のカウンターパートの企業経営者が、「中国は一党独裁であり、経済政策についても長期間安定した政策が継続される。これは企業家としても先の見通しが立ち、事業推進上大変やり易い。民主主義体制では、政権が変わるたびに大きく経済政策も変わり、企業経営の観点からは不安定性が高く、デメリットが多いのではないか。特に日本の場合、民主主義体制の下であのように頻繁に一国の指導者が変わっていては、経済界もやりにくいのではないか」言っていたというのである。
なるほど、中国流の見方によれば、政治体制としても中国の一党独裁の方が優れているという見方になるらしい。少なくとも短期的に見れば、この中国の方の指摘が日本においては的を得ているので反論しにくいのが残念である。
さて、そのような民主主義の価値まで相対化してしまうような中華思想に立った中国が、海洋国家としても大いに版図を広げようという野心に基づき、南シナ海、東シナ海にじわじわと進出を始めている。
中国問題に詳しい国際教養大学学長の中嶋嶺雄氏に過日伺ったところによれば、ECAFEの海洋調査で尖閣諸島に豊富な海底資源が存在することが明らかになった1969年から、中国は尖閣諸島の領有権を主張し始め、1992年には国内法である領海法を制定し、尖閣諸島は中国の領土だと決定したということである。因みにこの領海法では、尖閣列島を含む台湾や澎湖諸島はもとより、ベトナムやフィリピンと係争中である南シナ海の西沙、南沙両諸島まで中国の領土だということになっている。一方的な中国流の領土観が、中国内部では法的根拠をもったのである。
その中国が、普天間基地移設問題を契機にギクシャクした日米同盟の揺らぎの間隙を縫うように、また民主党の掲げる「政治主導」により官僚機構が機能不全を起こしているのを見透かすように、強引な外交・軍事戦略を展開しつつある。
わが国との間に北方領土問題を抱えるロシアとも共通の利害関係を見出しつつ、西と北からわが国を責め立てているかのごとき様相を呈している。近い将来尖閣諸島に大量の中国漁船が押し寄せてくるような気配もある。
人間の体は免疫機能が低下すると病気になる。まさに、今わが国は、履き違えた政治主導の撹乱により、国家機能が機能不全を起こしている。安全保障の問題、社会保障の問題、国の財政、経済対策など、満遍なくありとあらゆる方面で国家として免疫不全を起こしている。
その免疫不全状態の日本国に、かねてから執拗に領土拡張の野望を持つ中国が、その溢れ出るような経済力、軍事力、人的資源を背景にここぞとばかり日本に圧力をかけてきているというのが、厳しい現実ではないか。
政権交代があった昨年の衆議院選挙の直後、民主党議員が大挙して胡錦濤国家主席に拝謁を行った。あの光景を見てわが目を疑ったが、あの光景を思い浮かべる度に、中国が日本組み易しと考え尖閣諸島に示威行為を仕掛けようとする気持ちを誘発したのではないかとさえ思ってしまう。
さて、このような国家的危機の状態の中で、わが国は何をすべきか。それは、国家としての免疫力の回復である。外交・安全保障分野のエキスパートをはじめのとする専門家集団を糾合し、そのノウハウ、知識、ネットワークをフルに活用すべきである。誤った独りよがりの政治主導へのこだわりは国家を危うくする。
そして、日本と同じく中国の拡張主義を脅威と考えている諸国と連携し、国際世論に訴える戦略ネットワークを作ることである。
外交用語に、バンドワゴニングとバランシングという二つの考え方がある。強いものについてそれに追随するのが前者。強い勢力の力のバランスを調整することにより平和的均衡を維持するのがバランシングである。
日本は過去、強いと思われた枢軸国と軍事同盟を結び、手痛い失敗を犯した痛い経験がある。日米同盟という東アジアの安全保障の公共財たる条約を大事にしつつ、専門家集団の能力を最大限に発揮させるような、バランシングの外交を展開できるような真の意味の政治主導こそ今求められる。
自由民主党長野県第2選挙区支部長
務台 俊介
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