むたい俊介メールマガジン第72号 2010.07.18
地域の声を国政につなげ
地域の声で国政を変える
〜むたい俊介メールマガジン〜
「一票の格差問題と都市と農村の利害対立」
参議院議員選挙が終了した。政権交代後の与党の政権運営の評価に関しその可否を問うべき選挙となるはずのものが、直前の民主党新政権誕生により、新政権の信任を行うか否かに争点が移ってしまった。新総理が自民党が争点として提示した消費税引き上げに対して擦り寄る姿勢を見せたため、消費税問題は与野党の対立争点として機能しなくなってしまった。
そのために、有権者は今回、何に対して投票を行うべきかという明確な基準がなくなってしまった。結局、「ブレ」とか「唐突」とかいう抽象的な印象で有権者は判断を下したようなイメージを受ける。
それで、「民主党が敗れた」という一般的な評価ではある。確かに選挙区での議席を見ると民主党28議席に対して自民党は39議席と民主党よりも自民党が多い。しかし、この議席を生み出した票数を見ると、自民党の約1,950万票に対して、民主党は2,270万票を得ており、議席数と獲得票数が逆転しているというパラドックスが生じている。
この理由は明らかであり、かねてからの課題である「一票の格差」問題がその背景にある。都道府県単位に選挙区設定を行うことと選挙区選出議員定数の割振りの在り方の為に、選挙を行う前から一票の格差については構造的問題を抱え込んできたのである。
では、格差是正のために都会により多くの定数を配分すればそれで済むかというと、ことはそう単純ではない。格差を少しでも是正するために、例えば鳥取県と島根県の選挙区を合区することが簡単にできるか、というとその難しさは容易に理解できる。
その上に、国会議員定数の大幅削減が与野党の公約として今回の選挙戦でも謳われたが、定数が大幅に削減される場合には一票の格差は更に拡大する可能性が秘められている。
何故ならば、比例代表を削減することに対する大きな抵抗があり、選挙区定数を削減する場合は、「政治的にまとまりのある単位を構成する住民の意思を集約的に反映させることにより地方自治の本旨にかなうようにしていこうとする(最高裁判決補足意見)」都道府県単位の選挙区が果たしてきた意義が問われることになるからである。
おまけに、地方在住の有権者のなかにはただでさえ国会の意思決定の方向が都会的な方向に進んでおり、地方の声が都会に届きにくいと感じている素朴な潜在意識が確かに存在する。議員定数の大幅削減を訴える私の地元の有権者に、「その場合にこの地域の国会議員の定数が削減されることになりますよ」とコメントすると、国会議員は地域代表とすべきであり都会の定数を大幅に減らすべきとのコメントが返ってくるのが常である。
しかし、一票の格差の問題は、憲法14条の平等権規定と憲法43条の「国会議員は全国民の代表者」という憲法に由来する問題であり、憲法改正をしなければ素朴な地方の有権者の声には答えられない。
参議院にとどまらず、衆議院でも定数是正の議論は進んでいく。その場合、特に農山村を抱える地方の定数見直しは自ずから厳しい局面が生じる。これは同じく650名の下院議員の定数を600名に減らそうとしている英国とは全く逆の現象である。英国の区割りは、保守党が地盤とする郊外や農村地域の人口増に対応できておらず一票の重みが都市部に重い配分状態になっている中で、選挙区割りを登録有権者の差が5%以内になるように変更しようとしている。
消費税の引き上げ議論がある中で、国会議員定数の是正は避けて通れない。しかし、それを実際に行う段階で都市と農山村の利害の対立というその解決に非常な困難が予想されることも心に置いておかねばならない。そしてそれでもなお定数是正が実行される場合には、それぞれの地域から選出される国会議員が真に一騎当千の資質を保持しているということがこれまで以上に求められることはもとよりである。
自由民主党長野県第2選挙区支部長
務台 俊介
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