自由民主党

衆議院議員 むたい俊介オフィシャルサイト 長野2区 自民党
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理念・政策・メッセージ

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2008.09.17

「災害や戦争を検証・学習する博物館機能」


 ロンドン時代の私の宿舎から歩いて数分のサウスケンジントンに、自然史博物館という大変充実した施設がある。恐竜のコレクションを始め7千万点の展示物を誇る圧倒的な重量感のある博物館だ。進化論で有名なダーウィンの収集物の展示もある。その博物館内に、日本人の目には見慣れた阪神大震災の展示があります。実際に床を揺らして臨場感を持たせる装置も設置するなど大変凝っている。


 地震が極めて少ない英国では地震のイメージが沸きにくいが、阪神大震災の際のスーパーの陳列品が揺さぶられる模様などもビデオで流している。英国人の子供たちも地震とはどのようなものかを楽しみながら体験できる。


 地球の成り立ちを説明する中での地震の被害の現実の姿の解説なので、子供たちは巨視的に地震というものを捉ることができる。この体験をきっかけに、神戸を訪問してみようと思う子が出てくることも期待できそうだ。


 もうひとつ、ロンドン市内のバービカンというところにロンドン博物館というロンドンの歴史を展示解説した博物館がある。その中にロンドンが見舞われた最大の災害、1666年のロンドン大火の展示がある。現在のロンドンの中心部であるシティと呼ばれる地域の5分の4を焼き尽くし、13,200の家屋を焼失させた火災は、10万人のホームレスを生んだ。


 様々な角度からこの大災害を分析した展示は、臨場感最高です。東京が見舞われた関東大震災の模様を彷彿とさせる。但し、関東大震災が10万人を超える死者を出したことと比較し、ロンドン大火の公式死者数は10人なのだそうだ。当時、英国は外国との戦争をしており、外国人に対する猜疑心から、きちんとした英語を話せない外国人が暴徒から襲撃を受けた記録も書かれている。この点は朝鮮人が襲撃された関東大震災との類似性を感じる。


 当時、シティのこの地域はプロテスタントの居住地域だったことから、火事の原因はカトリック教徒の放火によるものであるという風説が流され、火元の家にはそのことが書かれた看板が立てられたのだそうだ。その看板の展示もある。


 ロンドンではこうした博物館を活用して防災教育が行われている。両博物館とも教師用のホームページも充実しており、防災教育の教材としてとても充実している。わが国の防災教育の素材を充実していく上でも大いに参考になる。


 英国の帝国戦争博物館(Imperial War Museum)の展示内容も充実している。戦争博物館というくらいだから、兵器展示が主たるもので戦勝記念の意味合いが強いのかと思いきや、兵器の展示はあるものの印象としては非常にローキーなもので、どちらかというと淡々とした展示だ。


 近代において英国の関係した数々の戦争を取り上げ、特に第1次・第2次大戦に関しては国民生活との関連で取り上げられているのが印象的である。諜報活動の歴史の展示もなかなかのもので、ドイツの暗号エニグマ(Enigma)とそれを解読した技術(ULTRA)の展示箇所では少し時間をかけて眺めた。インターネットの解説も充実しており、博物館から戻ってからも時間をかけて学習が可能だ(http://www.iwm.org.uk/upload/package/10/enigma/enigma14.htm)。


 展示の中で特に目を引くのはホロコーストに関する展示である。博物館が最も力を入れた展示のように見受けられる。欧州に根強いユダヤ人に対する反感の歴史を紐解き、その民衆の反感に巧みに分け入ったナチスの手法を克明に解き明かしている。私が以前訪問したチェコのテレジン収容所もアウシュビッツへの中継収容所という位置づけで解説されている。アウシュビッツ収容所で移送されてきたユダヤ人がどのようにしてガス室に送られたかを、模型展示で解説したものがあるが、思わず息を飲む。


 ナチスのユダヤ人に対する迫害に対して、連合国側の対応(戦争終結を待っての対応)が緩慢ではなかったかとの問題提起もある。日本政府がユダヤ人にビザを発給して脱出を手助けした解説もあるが、この支援を「日本政府」が行ったと言ってよいのかは問題かもしれない。杉原千畝氏は外務省の訓令に反してビザを発給し後に処分を受けたのだ。


 ホロコーストに関しては、展示もさることながら、インターネット上の解説も豊富だ。博物館のネットにリンクされているBBCのプログラムなどは画像でホロコーストの歴史をコンパクトにまとめている(http://www.bbc.co.uk/history/worldwars/genocide/launch_ani_auschwitz_map.shtml)。


 ホロコーストは民族問題が絡む問題でもあり、指導者育成にも意が払われているが、これはどこの博物館にも共通したもののようだ。博物館を中心に広いネットワークを形成していることが伺われる(http://www.iwm.org.uk/server/show/ConWebDoc.3267)。


 家族連れの見学者が沢山おり、子供のうちから人権感覚を植え付けていく英国の社会教育システムの一端を垣間見た思いがする。


 人道に対する犯罪の歴史の展示もある。北京オリンピックの関連で注目されたチベットに関しては、共産党による「数百万人の虐殺」という記述に目がとまった。


 原爆被害に関する現物展示が皆無であることに少し違和感を覚えたが、博物館のネット上で調べてみると資料自体はあった。しかしさらに調べると、アヘン戦争に関する英国の行為に関する資料はネット上にも見当たらない。どこの国でも自国の加害行為に関する記述は大変難しいものがあるようだ。


 戦争関連のポスター展示があったが、イラク戦争に関するブッシュ大統領とブレア前首相の関係に関して、ポスター上で痛烈に皮肉っているものが目を引いた。イラク戦争突入の経緯に関して、英国内でも疑問視する人が多い証拠のように思われた。


 私は英国の他にもこれまで米国、ベトナム、韓国、チェコといった国々の戦争博物館を訪問したが、それぞれに特色がある。翻って、我が国には、戦争というものを包括的に取り上げた博物館というものがない。おそらく展示内容を巡って議論百出になり、面倒なことをしたくないということなのかもしれない。しかし、人類の将来に間違いを起こさないためにも、我が国が当事者となった戦争の歴史を正面から取り上げる博物館機能は国家として必要であるように思われる。その意味で、英国の戦争博物館の機能には学ぶべきところは多い。


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