自由民主党

衆議院議員 むたい俊介オフィシャルサイト 長野2区 自民党
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理念・政策・メッセージ

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2008.09.15

「ドイツに於ける人口減少社会への対応」

〜日本と類似の状況の中での実験的取り組み〜


 私が一年間暮らした英国では、旧東欧諸国をはじめとする諸外国からの移民により将来の人口増の影響をどのように吸収していくべきかが大きな政策論争の的になっているが、一方で旧東欧諸国は急速に進む人口減に悩んでいる。


 縮小する都市(shrinking cities)に関する政策対応が日本でも大きな関心を呼び始めているが、人口が減り始めた日本も本格的な政策対応が求められるように思える。限界集落問題などはその端的な発現形態だが、残念ながらわが国ではこの問題が政策当局により真正面から取り上げられることはこれまでなかった。


 それどころか、財政構造改革の流れの中で、条件不利地域が見捨てられるのは当然であるというような経済学者の発言が著名な経済紙を飾ったのはごく最近のことだ。


 ところで、こうした単純な経済至上主義の効率論とは一線を画する動きが欧州大陸にはある。私は、夜がとても長くなった2007年11月中旬、ベルリンを囲む旧東ドイツ地域のブランデンブルク州を訪問した。ブランデンブルグ州議会議員、ブランデンブルグ州内務省幹部、ポツダム大学行政研究所長・教授、ブランデンブルグ市町村連盟幹部、ブランデンブルグ州ハーベルランド広域計画連盟、アムト(amt;自治体が構成する一種の全部事務組合)事務局長、アムト構成自治体の名誉市長といった方々にお会いし、それぞれの立場からの地域の人口減と地域問題、集落問題などに関して多角的な視点を伺ってきた。


 このうち、ブランデンブルグ州関係者からの話の概要は次の通りであるが、日本の地方都市や農山村の抱える課題に関する共通の問題意識の元に、実験的な対応を行ってきている。我が国の政策にも参考になるものがあるように思われ、ここに紹介する。


 ブランデンブルグ州議会議員のメリオール女史は、ブランデンブルグ州における人口減少と高齢化の進行の中で、州政府与党である社会民主党の地域社会を強くする政策概要をお話いただけた。同議員の話では、今後は統合に伴うEUからの補助や旧西ドイツ地域からの支援が見込まれず減少する財源の中で「選択と集中」が課題となっているとのことであった。ブランデンブルグ州を満遍なく発展させる分散発展政策によっても人口減に対処できなかったという反省もあり、2008年からは州の発展計画を改正し、今後は特色があって強い地域をより強くする考え方に立ち、それによりブランデンブルグ全体を牽引させるという政策(強いところをより強く=Staerken Staerken)を取りたいとの説明であった。しかし、この考え方に対しては、その区域から外れる農村地域からは強い反発があるとのことであった。


 一方で、ブランデンブルグ州には、州政府の元に郡と市町村があるが、郡は都市部と農村部を両方域内に抱え、都市と農村の両方の発展のバランスを図るように行政運営をしているとの説明もあった。旧来の小さな郡の統合・再編成も行われてきているとのことであった。メリオール議員の話しぶりからは、都市の活力を農村振興に生かす考え方は依然として維持されるようではあった。


 ブランデンブルグ州内務省のグリューネバルト博士からは、体系的で詳細な人口減少政策に関する背景説明や具体例のご紹介を頂けた。実は博士は法律家で、現在の本業は自治体の業務の法律適合性の監視なのだが、内務省勤務の前にポツダムから100キロ離れた人口198人の村出身地などから構成されるアムトと呼ばれる行政組織の事務総長も勤めた経験もあり、自らの経験を踏まえ幅広い観点からお話をいただけた。


 ブランデンブルグ州の内部では、ベルリンを中心にして各市町村をケーキを切り分ける如く都市と農村を包含するように郡を作り地域振興面の工夫をしてきたこと、しかし急速に進む高齢化と人口減少の中で大きな問題が顕在化してきていることを具体例を挙げて説明して頂けた。


 ブランデンブルグ州では現在250万人の人口が2030年には180万人に減少し、平均年齢も43,1歳が51,5歳に上昇するのだそうだ。特に教育水準の高い層が州を去り、高学歴の女性の流出が深刻なのだそうだ。その結果男性の結婚難が社会問題になっているとのことであった。しかしこれには州政府の政策の失敗もあったようだ。前の州首相が、失業率が高い時代に反対論を押し切り、州からの移住に対して補助金を支給したのだそうだ。その結果高学歴の女性が経済状況のよい旧西ドイツのバイエルンなどに流出し、ブランデンブルグ州の人口構成に深刻な影響を与えたとのことであった。失業給付の負担を軽減しようとした州政府の思惑は、州の将来に深刻な影響を与えたのだ。3年ほど前からこの助成金制度は休止されているが、やや近視眼的な政策のつけは大きいようだ。


 グリューネバルト博士は現在も198人のライヒバルデという村から毎日往復200キロを自動車で通っているのだそうだ。ブランデンブルグ州は無料の高速道路が張り巡らされ日本の農山村よりはずっと交通の便はよいのだが、それでも200キロとは大変だ。しかし、博士に言わせると、電車を乗り継いでベルリンから来る人も結局一時間くらいかかってポツダムに通ってきており、便利な自動車で通う自分とそう変わらないとおっしゃっておられた。とにかく、博士は自然の中で過ごすのがこよなく好きなのだそうで、ここら辺は頑固な価値観の違いを感じる。それでも最近の行き帰りの中で、野生の狼やヘラジカが道路に出てくることがままあるとおっしゃっておられた。


 EUの農業政策の変化で農地を20%耕作放棄すると補助金が出るようになり、その結果、人里に野生動物が姿を現し出したということだ。この辺りは、長野県の阿智村の岡庭村長がおっしゃるようにイノシシや鹿の被害に悩む日本の山村と似た状況だ。


 旧東ドイツのこの地域は、多くの人が出身地に留まり都会に通勤するのだそうだ。住居移転は考えない人が多いようだ。これはとにかく伝統なのだそうだ。家族構成も大家族がまだ残り、三世代居住も珍しくはないのだそうだ。子供が親の世話をするのは当然であるという、少し前の日本の地方の価値観に似ている。しかし、最近のガソリン価格の高騰で、長距離自動車通勤が困難になりつつあるという懸念も表明されていた。


 人口減少に対する処方箋について、先ず博士は合併を取り上げていた。以前州内に1479あった市町村が合併により2003年までに434に減っている。州憲法で郡と市町村の役割分担がはっきり分かれている中で自治体間協力が難しい仕組みがこれまであったが、その法律環境を整えることで自治体間の協力体制の構築も進めているとのことだ。


 ITを利用した行政サービス見直しにも取り組んでいるとのことだ。実際に住民が行政機関を訪問するのはせいぜい年に2回であり、そうであればわざわざ具体的な行政機関の建物の設置は必要ではないのではないか、との観点から仕事の仕方の見直しを進めているとの話もあった。仕事をフロントサービスとバックサービスに分け、バックサービスはどんどん民間に委譲するという方式も検討しているようだ。


 また、これまで行政が行ってきた仕事を住民自らがやったりボランティア組織に委ねたりといった動きも急だということだ。「デマンドバス」で必要なときに駆けつけるバス、「市民バス」という仕組みを導入し市民が市民を運ぶ手法など、様々な工夫も行われているとのことだ。学校の建物を多角的に利用することなどは、当然のように行われている。学校は午前中で終わるので、午後は保育園に利用、夜は住民向けの劇場として使うことなどは合理的と考えられている。余った保育園は大家族の個人に売却することもありうるのだそうだ。要するに公的サービス機能のコンパクト化・集約化・複合化だ。


 公共投資に補助金を出す際には、将来の人口構造の動きを必ずチェックするようにしているのだそうだ。将来に向け無駄な投資にならないようにするためだ。私が、日本では、逆に人口を増やすためにも公共投資が必要だと言う議論が出てくるのですよ、と指摘するとにやりと笑っておられた。


 それでも日本の「限界集落」のような議論は、この地域では出ていないのだそうだ。正確に言うと住民が自ら判断して集落から住民が居なくなることはあっても、行政の側で集落を廃止する議論はない、とグリューネバルト博士は口調を強めて発言していました。そして、その理屈が振るっていた。ドイツは過去に人口減を経験済みだというのだ。ドイツでは1618年から1648年の30年戦争で多くの人がなくなり人口が減少した歴史があり、更にその前の14世紀にはペストの影響で人口の2/3が死亡した時期があったが、それでも集落がなくなったことはなく、歴史的な地名が引き継がれている、との所論です。


 博士からは、内務省内におけるアムトの位置づけに関する興味深い話も伺えた。内務省では農村地域のアムトと呼ばれる行政組織を効率性重視の観点から廃止する議論がこれまで主流だった。先ほど市町村数が2003年までに434まで減少したと書いたが、ブランデンブルク州では市町村に2種類ある。144の市町村はアイネハイツ ゲマインデと呼ばれる単一で行政機関を形成する自治体だが、残りの290の市町村は実は共同でアムトと呼ばれる行政組織を作り、事務の共同執行をしている。博士は、自身の属するライネバルデを含む13町村から構成される人口5,300人のアムトの事務総長を務めていたということになる。ブランデンブルグ州にはこのアムトが54あり、このアムトとアイネハイツ ゲマインデを併せた「行政単位」の数は198あるということになる。


 なお、アムトを構成する市町村の長は名誉市長と呼ばれ選挙で選ばれるが、アムトの責任者である事務総長は名誉市長が相談の上公募をかけ選任することになる。グリューネバルト博士はそうやって過去に選任された。


 さて、内務省のアムトの位置づけ議論に戻りますが、一時期のアムト廃止議論は、現在では、行政の直接執行サービスを減少させる動きの中で、アムト構成市町村のボランティア機能を活用すべきであるとの議論が強くなり、アムトの再評価がなされているとのことだ。


 キーワードは、「市民自らが行う」市民社会、独立自治なのだそうだ。そしてそのために縦割りであった制度も抜本的に変更を行ってきている。これまで学校の教員の任命や給与負担は州政府の責任であり市町村は学校の設置権限しかなかったが、教員人事権も市町村に委ね市町村に当事者意識を持たせようとしている。


 博士の認識では、人口減少は解決策が見出せるものではなく、その与件を前提に、どのように対処するかを皆が政策論議に参加して対処を考えるしかない、とのことであった。人口減少を抱える日本で分権議論が出てきているのと何やら似通った局面だ。


 その中で、都市の縮小の手法としてシュタート ウンバウトと呼ばれる都市再建の事例も紹介していただいた。ブランデンブルグ州とポーランドの国境地域に所在するシュベット オーデルという都市は、東ドイツ時代重工業都市として発展し、45,000人の人口を数えたが、今では30,000人を切っている。もともと8-10万人を想定して団地を作ったものの、現在ではその過剰団地を4,500戸壊し、緑地を増やす都市再建を進めている。連邦政府の補助があって実現できているプロジェクトだ。人口規模に見合ったコンパクトで居住環境のよい都市づくりを目指し人々の定住を促進することが目的だが、なかなか思いどおりにはいかないようだ。


 住居を壊すことで従来のコミュニティも壊れてしまうことになるのだそうだ。居住環境のよくなったところは家賃が上昇し、勢い所得の高い人が移り住み、貧しい人は従来のところに居住するという二極分化が発生している。道路などの社会資本も過剰で、道路をコンパクトにし街路を明るくするにも資金が必要になる。下水管理も頭を悩ます問題だ。下水には一定の水量が流れないと下水が詰まってしまう。おまけに下水利用者が減ると一人当たりの使用料が増えて負担しきれなくなってくる。


 このような問題を含め、都市再建の投資と維持費の負担は連邦政府の支援がないと機能しないという実態がある。人が住んでいない住居が個人所有の場合にはどうやって同意を取り付けるかの課題もあり、資本主義経済に移行した中での都市の再生はまだまだハードルが高い。


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