「長野市大岡・山村留学30周年の総括と今後の展望」
〜現状の評価・課題整理・持続可能化に向けた政策的処方箋〜

�T30周年記念式典で確認された「大岡モデル」の価値
 2026年10月12日、長野市大岡で山村留学30周年記念式典が開催され、修園生、農家里親、現役生、保護者、行政関係者など多様な主体が参集しました。私も20年来の支援の経緯から参加し、山村留学が地域に根付き、全国から修園生が戻る「帰郷の場」として機能していることを確認しました。

1山村留学の成立と発展の経緯
・ルーツは35年前、大町市八坂で始まった山村留学の成功に触発され、大岡村が八坂村に生徒の融通を求めたこと。
・5年間の短期事業を経て30年前に本格化。産経新聞の大きな報道が大阪圏からの募集につながった。
・青木厚志代表理事の弟・青木高志氏が指導員として大岡に入り、集落ぐるみの協力体制を築いた。「一人の子どもを育てるには一つの村が必要だ」というアフリカの諺が象徴するように、地域全体の支えが基盤となった。

2大岡モデルの特徴
・寄宿舎(山村留学センター)と農家里親制度(年間120日滞在)を組み合わせた「集落全体で育てる」仕組み。
・小林壱男氏、小松茂和氏ら地域の先達が制度の礎を築いた。
・30年間で420名を受け入れ、全国から修園生が戻るほどの強い結びつきが形成されている。

3教育的効果と地域への還元
・保護者からは「自立した子どもに成長した」との声が多数。
・山村留学OBが地元寺院の住職を継ぐなど、地域の担い手として戻る例もある。
・42名もの若者が大岡にUターンしており、子ども時代の「大切にされた記憶」が地域回帰につながっている。
・自然環境、徒歩通学、スマホのない生活、手紙での親子連絡など、都市とは異なる生活環境が心身の強靭性を育んでいる。

�U山村留学の政策的な位置づけ(現状整理)
1地域資産としての三つの価値
・人材育成:自立性・強靭性を備えた若者を輩出。
・関係人口の創出:修園生・保護者・里親農家が長期的な関係を維持。
・地域ブランド形成:大岡の名が全国に知られ、都市部からの参加者も増加。

2大岡地区の政策的位置づけ
・長野市の「過疎地域持続的発展計画」対象地区。
・「やまざと振興計画」で移住・交流・農業体験の拠点として明確に位置づけられている。

3財政環境の変化
・長野市は「一部過疎」から卒業し、過疎債の発行額が経過措置の中で縮小。
・過疎債一本で山村留学を支える設計は持続可能性に欠ける。

�V課題整理
1財源の不安定化
・過疎債の縮小により、里親農家支援・受入環境整備の財源が不透明。

2担い手の高齢化
・農家里親の高齢化が進み、次世代の受入農家・コーディネーター確保が課題。

3制度の縦割り構造
・教育・福祉・移住交流・農業振興のどこに属する事業か曖昧で、予算が分散しやすい。

�W政策的処方箋(維持・発展のための方向性)
【処方箋�@】財源の多様化と複線化
1過疎債・過疎基金の「ラストスパート投資」
 経過措置期間(令和8年度まで)に、基盤整備を集中的に実施する。
・里親農家の住宅改修
・安全管理体制・スタッフ研修
・農業・林業・文化・防災などの新規プログラム開発

2ふるさと納税・企業版ふるさと納税の活用
・「子どもが育つ山村」「里親農家支援基金」など目的特定型メニューを設計。
・企業版ではSDGs・人材育成と連動した研修+支援パッケージを構築。

3受益者負担の再設計
・所得に応じたスライド制、奨学金制度を導入。
・教育投資として納得感のある料金体系を整備し、低所得層は寄付・公費で支援。

【処方箋�A】制度設計の再構築(中山間地再生の中核事業化)
1計画上の格上げ
・山村留学を「関係人口創出・担い手確保」の中核事業として、
 第三次やまざと振興計画
 中山間地域のあり方研究会 へ正式に位置づける。

2分野横断の統合プロジェクト化
 教育・移住交流・農業林業・文化継承を束ねる単独事業コードを設定し、縦割りを解消。

3集落支援員制度との連携
・留学生家庭の見守り
・里親農家の負担軽減
・集落の合意形成 を人的支援として制度化する。

【処方箋�B】受入体制・プログラムの進化
1里親農家の次世代化・多様化
・農家だけでなく、二拠点居住者、地域おこし協力隊などを「新しい里親候補」として育成。
・コーディネーター・里親農家の認定制度を整備。

2都市部との接続強化
・日帰り → 短期 → 中期 → 年単位の階段型プログラムを構築。
・長野市街地の学校とオンライン+現地授業で連携し、都市部から大岡への導線を拡大。

3テーマ型山村留学への進化
・再エネ、森林整備、鳥獣対策、防災、文化継承などを学習テーマ化。
・中山間地の課題を体感し、解決を考える「地域担い手育成の場」として位置づける。

【処方箋�C】成果指標とPDCA
1成果指標の設定
・人口・関係人口:児童生徒数、修園生の再訪・移住・二拠点化
・地域経済:里親農家の収入、地域内消費
・地域コミュニティ:行事参加者数、自治協議会活動量

2計画との整合
・長野市過疎地域持続的発展計画の「3年目中間評価・6年目最終評価」に山村留学指標を組み込み、議会・住民自治協議会へ定期報告する。

■ 総括
 大岡の山村留学は、単なる教育プログラムではなく、 「人材育成・地域再生・関係人口創出」を同時に達成する中山間地の戦略的インフラ へと進化しています。
 今後は、財源の複線化、制度の格上げ、受入体制の次世代化、成果指標によるPDCA を柱として、持続可能なモデルへと発展させることが求められます。

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