12月4日、駐日ウクライナ大使館にルトヴィノフ・ユーリ大使を訪問し、ウクライナに平和が訪れた際の日本の支援の具体的処方箋について意見交換をしました。2025年2月に同国キーウを訪問し、災害時の被災者支援の観点からその機能を日本で進化させたトレーラーハウスをウクライナで家を失った皆様、戦災復興でウクライナに駆け付ける支援者のために、移動可能で機動的な避難施設、待機施設を提供するための需要調査を行って参りました。
その際のウクライナ側の国会議員、政府、経済界の皆様の声は、「戦争終結を待つまでもなく今すぐにでも欲しい」というものでした。しかし戦時下のウクライナでこうした支援の受け皿を探すのは至難の業であり、しかも2月のキーウ訪問時より、ロシア側の攻撃は激しさを増し、ウクライナ政府としての優先順位は防空体制整備、緊急対応面に向かわざるを得なく、トレーラー施設を含む避難施設に関しては、話を詰める作業が停滞気味でした。
そのような中で、経済産業省がウクライナ支援のために我が国の技術を現地で展開するための助成制度を用意していることもあり、その採択の準備も必要なことから、駐日ウクライナ大使館を訪問し、現地での受け入れ対応についてアドバイスを頂くこととしました。
ユーリ大使からは、日本のトレーラーハウス(長野市の事業者が製造)が、熊本地震、北海道胆振東部地震、能登半島地震の災害対応に大きな貢献をしてきたことを評価し、経産省の補助金を使ったパイロットプロジェクトを糸口に、ウクライナ側での体系だった展開につなげることが望ましいこと、ウクライナが復興の優先順位を決めていく場合に日本を始めとした国々、機関の財政支援が心強いこと、JICA・JETROとの連携も必須であることが述べられ、トレーラーハウスを活用した被災者支援の充実について本国政府(地域コミュニティー省)にしっかりと伝えていく旨返事がありました。
今回のトレーラーハウスには、水道機能が脆弱な地域でも展開できるように、自然水利を活用した高度浄水機能もトレーラーハウスに組み入れる工夫も取り入れています。長野県安曇野市でこの浄水システムを開発している防災系事業者が、最近は信州大学が発明した最新浄水膜を組み入れた装置を提供することとしています。日本発の防災技術が戦災復興にも役立つ事例として、私も、合同会社防災制度・運用研究会の代表社員として貢献して参りたいと考えています。
また、ユーリ大使とは、私が所属する日本核シェルター協会によるシェルター調査でスイス、イスラエルを訪問した話を伝えました。スイスは地下シェルターの世界基準を持つ国、イスラエルは紛争地域に所在する国として独自のシェルター整備の基準を持つ国です。大使からは、ウクライナは最近フィンランドなどと共に国際シェルター連合を形成していること、それに日本も参加して欲しいこと、ウクライナでもシェルター建設プロジェクトを開始しており日本の協力も有難いこと、特に学校にシェルターが不足しておりその設置を進めると共に、授業を中断しないためにはそもそも地下学校を設置する検討も始めており、これにはEUの支援金も投入されていることを承りました。
ロシアによる不法で執拗な侵略行為の中でも、ウクライナが持ちこたえているのは、ウクライナ人の国を思う気持ちに加え、日本では余り報道されない地道な国民保護の仕組みがあり、それが進化していることも知る機会になりました。
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