「コロナ禍で生じた人口の地方への流れを太い流れに」

 2020年に兆候の現れ始めた新型コロナウィルスは変異を繰り返しながらその流行の猛威を継続し、遂に3年目の流行に突入しています。その結果、国民生活に多大な災禍を与えているだけではなく、社会の在り方を根本的に変える原動力ともなっています。

 政府が長年かけて取り組んできて、その成果が殆んど実現できなかった東京一極集中の是正も、コロナ禍により大きな変容がもたらされています。

 総務省が住民基本台帳に基づいてまとめた外国人を含む東京都の人口の動きは、2021年1年間で転入が転出を5433人上回る「転入超過」となりましたが、その人数は2020年より2万5692人減り、現在の方法で統計を取り始めた2014年以降最も少なくなりました。さらに東京23区でみると、転出者数が転入者数を1万4828人上回り初めて「転出超過」となりました。その東京から転出した人はどの自治体に移り住んだのかについては、2021年で最も多かったのは神奈川県で9万6446人、次いで埼玉県が7万8433人、千葉県が5万8485人などとなっています。市町村別で最も多かったのは横浜市の3万5736人、次いで川崎市が2万9318人、さいたま市が1万5597人などとなっています。

 より巨視的に、東京都から道府県に転出者数について、新型コロナの感染拡大前の2019年と去年を比べた増加率を見ると、増加率が最も高かったのは、鳥取県で25.1%、次いで長野県が19.6%となったほか、高知県が19.2%、山梨県が17.7%、徳島県が17.4%などとなっています。

 このように、コロナ禍が契機となり、政府の政策目標が期せずして達成されたという結果になっています。政策努力の結果ではなく、パンデミックという天災によってそれが実現されつつあるということは喜んでいいのか悲しんでいいのかよくわかりません。しかし、我々が、一極集中の弊害として、災害の発生や伝染病が蔓延した場合の人口集中の脆弱性を予てから指摘していたことを考えると、その懸念が的中したとも言えます。

 今後の課題は、期せずしてコロナ禍で実現しつつある人口の東京一極集中の逆流を、我が国の国家構造の在り方として確かな流れとしていくことです。コロナ禍が収束すれば、東京一極集中が元に戻るという見方もあります。そうならないようにするために、どのような政策が必要か、政治の場での議論が求められます。

 若い女性が地方から東京に流入している現状を見るにつけ、女性が地方でこそその能力を発揮できる環境整備は当然必要です。若者を大都市に誘う高等教育機関が首都圏に集中している現状の見直しも必要です。最低賃金が大都市ほど高い現状の中で高収入を得るために大都市に働き手が集中する制度の見直しも必要です。高速ネット環境の整備を都市と地方で格差のない状況を作り上げていく必要もあります。

 私が活動している選挙区は、北アルプスの麓であり、日本一のスノーリゾートの宝庫、山岳登山のメッカ、水資源・清涼な空気の宝庫です。若い世代がためらいなく移住を検討しつつある地域を抱えています。しかし、潜在可能性はあっても、その価値を顕在化する努力とアピールがまだまだ不足しています。

 現在、政府は、2050年カーボンニュートラルの一環として脱炭素先進地域の取り組みを進めようとしています。その先進地域として地方の自治体が手を挙げ、若者がそこで活躍したいと思う受け皿を作ることによって、コロナ後の社会にあっても、若者を地方に誘う流れがさらに加速することを願っています。私も、現在仰せつかっている環境副大臣の職責をフル活用して、その流れを加速したいと念願しています。

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