今年の夏は異例続きの毎日となっています。本来であれば8月11日の祝日であったはずの「山の日」は、延期された東京オリンピックの閉会式の翌日を祝日にして欲しいとの東京オリンピック関係者の要請を受け、今年に限り法律改正までして前日の8月10日に祝日移動したものの、結果は何もない静かな3連休として過ぎました。「山の日」の全国記念行事も新型コロナ感染症の影響で延期となってしまいました。私自身は「山の日」を含む3連休は、4年前に第1回「山の日」記念事業が行われた上高地で家族とともに過ごしたものの、晴れがましいことは一切無く体を休める休暇となりました。家族で梓川河畔を遡り、上高地の知り合いの山小屋、旅館を訪問し、じっくりとコロナ禍の影響、今後の北アルプス、上高地の保全と振興策を話し合う機会ともなりました。
コロナ禍で見えてきたものは、何気ない日常こそが大切であり、緊急事態があってもその日常を維持し、早期にその日常を回復するためには、一定の仕組みが必要だということを多くの人がはっきりと理解したということではないでしょうか。産業界では非常時に如何にサプライチェーンを維持し早期に回復するかが大きな課題となっています。社会の仕組みの面では、首都圏に過度に機能が集中していることが、大規模災害や今回のコロナ過で致命的な問題を引き起こす危険性を再認識させました。そして、コロナ過は人間の持つ免疫力というものも改めて認識させました。加齢や病気などで免疫力が弱まっているところに新型コロナウィルスに感染すると重症化したり死に至ったりする危険性がクローズアップされています。経済社会も人間の体も、強靭性、免疫性を強めないといけないという課題が我々に突き付けられています。
新型コロナウィルスに関してはワクチンや治療薬の開発が待たれていますが、ウィルスは変異します。恐らく今後はワクチンや治療薬との鼬ごっこになっていくのでしょう。感染症学者によれば、人類の歴史は細菌やウィルスとの永遠の戦いの歴史でもあるとの見方もあるようです。
こうした話を、訪問先の上高地の山小屋の皆様とする中で、山に親しむ人を増やすことで人間の自然免疫力を高め、新型コロナウィルスに耐えうる体力をつけることができるとの確信に近いご意見を承りました。山小屋も今は状況は苦しいが、何とかこの逆境を切り抜けてよりグレードアップしたサービスを提供していきたいとの前向きな気持ちを聞くことができました。そうした中で、山小屋が、これまで山岳救助や登山道の整備を営業で得た利益の中でボランティア的に行ってきているが、コロナ禍の逆境の中でこうした余力が山小屋から失われているとの指摘も伺いました。確かに、山岳救助や登山道の整備といった機能は準公的機能ですが、これまでは現場力の高い山小屋などの関係者に依存してきた面が多々ありました。「山の日」が祝日になり、より多くの皆様に山の恵みに感謝し山に親しんで頂くためには、それを支える幅広い社会インフラの在り方も議論していかなくてはなりません。そのためにも「山岳地域振興基本法」とも言うべき法律を制定し、その下で山岳振興の基本的理念、その下での山小屋の機能の位置づけといった点についても考え方を整理していく必要があるように思われます。この点については、環境省とも認識は一致しています。
北アルプスを選挙区に有するという奇縁に恵まれた代議士として、「山の日」議員連盟の場で、新法制定に向け汗をかいていきたいとの気持ちを固めた今年の上高地滞在となりました。
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