「伝統的茅葺き文化が実は最も現代的な価値を体現」
〜国際茅葺き会議を受けて議員連盟設立へ〜

 世界から150人の茅葺き職人を集めた第6回国際茅葺き会議2019が5月下旬に日本で開催されました。世界遺産の合掌造りで有名な岐阜県白川郷という開催場所は、茅葺き国際会議にはふさわしい場所でした。私は、選挙区内の地元小谷村の茅葺き職人松澤父子にお誘いを受け、参加しました。長野県には、小谷村に茅場があり、戸隠には重要伝統的建造物群として茅葺き集落があり、日本を代表する茅葺き職人の技が伝えられており、この機会を逃してなるものかという気持ちで、国会開催中ではありましたが、6月下旬の土曜日、北アルプス越えの往復6時間の道のりを松本市から白川郷に駆け付けました。

 開会式で、文化庁、岐阜県、白川村に次いで挨拶をさせて頂きましたが、茅葺き文化を伝承することは国の責務であること、それをバックアップするために国会議員による茅葺き文化伝承議員連盟(仮称)を設立することを検討していると申し上げました。文化庁によると、茅葺き技術を含めた日本の伝統的建築技術については、世界無形文化遺産に登録申請をしているとのことでした。議員連盟としては、そういう動きもバックアップしていくつもりです。

 実は、平成から令和への御代代わりに当たり、大嘗祭が11月に予定されていますが、大嘗祭の会場である大嘗宮が今回茅葺き仕様での造営が見送られました。日本茅葺き文化協会では伝統的な茅葺仕様により行うことを宮内庁に談判し、私も何とかならないかと側面支援しましたが、予算、日程、技術者の確保の制約を理由に、無理だとの返事を頂きました。今回の対応の反省を受け、茅葺き文化を政治的にバックアップする枠組みが必要だとの認識に至ったという事情もありました。

 国際茅葺き会議では、英国、スウェーデン、デンマーク、オランダ、ドイツ、南アフリカの茅葺き職人から、それぞれの国における茅葺き建築の現状と課題についてプレゼンがありました。私は、茅葺き文化というのは日本独自の伝統文化だと思い込んでいましたが、100年前の北部ヨーロッパでは、建物の90%が茅葺であるという歴史があるのだそうです。そして、今それが現代建築にも生かされている、特に富裕層のステータスシンボルとして茅葺きを屋根や壁の仕様に活用することが好まれているとの報告がありました。ロンドンにあるシェークスピア劇場のグローブシアターも屋根は萱で葺かれているとの報告がありました。一方で、茅葺き職人の数が激減し、技術の継承が大きな課題であることも伺いました。茅葺きの材料はバリエーションがあり、水生植物の芦や葦、茅、ススキ、稲わら、麦わら、クマザサと多様なのだそうです。

 日本人によるプレゼンは、日本茅葺き文化協会安藤邦廣会長が行いました。安藤会長とは、昨年の小谷村栂池の茅場の火入れでお会いして以来意気投合しました。安藤会長は、萱を活用した伝統的日本人の生活システムが、地域資源たる萱を、家畜のえさ、建築材料、古くなった茅葺屋根は田畑の肥料に、という具合で資源の地域循環が完結していたことを解説し、更に、芦や葦といった水生植物は水を浄化する機能があり、葦原、葦原を屋根に使うために人の手が入ることで葦原、葦原が保全され、結果として生物多様性を育んできた側面もあるとの解説をされておられました。要するに、伝統的茅葺き文化が、実は現代的価値観を体現しているとの解説でした。

 今回の国際茅葺き会議に出席し、茅葺き文化は、文化庁の所管に加え、国土交通省、環境省、林野庁、全国の自治体が真剣に取り組むべき課題だと認識するに至りました。議員連盟の活動の中で、茅葺き文化を現代に生かす政策をしっかりと掘り下げて参りたいと考えています。


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