10月25日に上高地の梓川上流部の河床上昇の現状を視察し、地元が抱える課題を皆様と共有してまいりました。高瀬川渓谷において9月3日に行った大町ダム、七倉ダム、高瀬ダムの利水と治水の調整、堆砂の状況、ダムの発電機能向上などの課題についての現地学習会に引き続く山岳地域視察であり、選挙区内の河川砂防の大きな課題をしっかりと学習してまいりました。
今回の視察は、深刻化する上高地の河床上昇問題の課題解決の突破口を開きたいとの、上高地町会の肝入りにより国交省、環境省、林野庁、長野県、松本市と共に、現地視察、意見交換の場を持たせて頂きましたが、この数年の土砂堆積が著しい現状と早期の対応の必要性を一同で共有することができました。
国においては、上高地の保全整備を行うべく直轄で砂防工事などを実施してきていますが、河床上昇への対応としては、「上高地ビジョン2014」という計画の中で雨量計や水位計等を設置し定量的な調査を実施し土砂動態メカニズムを解明しようと試みています。その上で、上高地関係の松本市域行政機関連絡会、上高地土砂移動機構解明勉強会を通じて平成31年夏までに河床上昇対策メニューを提示する予定でいます。このメニューはおおむね5年以内に実施すべき内容を盛り込むものとされていますが、今回、国から地元の皆様に、1,梓川各支流(特に横尾沢、奥又白谷、白沢)における生産土砂の抑制、流下土砂の調整、2,梓川本流における大規模崩壊や計画規模出水に備えた流下土砂の調整、氾濫抑制、3,堆積土砂の掘削・運搬という河床上昇対策の大筋の考え方が示されました。
堆積土砂の運搬については、特別保護地域からの土砂搬出は禁止されているとの認識がある中で、環境省から、既に「中部山岳国立公園の特別保護地区内における行為の許可基準の特例の一部を改正する件」が告示されており、上高地の堆積土砂の効果的除去ができる措置が講じられている旨、今回再確認されました。この懸念については、私が平成29年12月5日の衆議院環境委員会で質問を行い、当時の中川環境大臣が「特例地域指定で土砂搬出可能」との答弁をされたことと整合性がとれています。
これらの認識のもとに、地元町会の皆様からは、
・土砂堆積により梓川が天井川になり、昔は見られたイワナや水鳥の姿が見られなくなった
・「上高地ビジョン」はできたが対策は遅々として進まない
・とにかく早く堆積土砂搬出を開始してもらいたい
・上高地の土砂を買いたいとの砂利業界の希望も寄せられている
・大正池の水門が土砂堆積の原因の一つになっている
・下流域に土砂を運搬し、洪水時に流すという手法がありうる
・上高地は特別天然記念物に指定されているが、河床上昇でそれが損なわれている
・ちょっとした雨量で登山道が浸水で歩けなくなる現状がある
・異常気象で上高地の浸水が常態化する懸念があるといった現実を踏まえた指摘が行われました。その上で、全体の事業の牽引役として地元の松本市の役割を求める意見が強く出されていました。
実は、上高地上流部の河床上昇対策に関しては、国土交通省、林野庁、長野県、松本市などの役割分担が曖昧で、どの行政主体が主導的に対策を引っ張っていくかどうかが問われています。今回の現地勉強会、視察もそうした閉塞状況に風穴を開け、事態を打開すべく上高地町会の肝入りで実現した経緯がありました。地元選出の与党の国会議員がそのつなぎ役を果たすことができたとしたら代議士冥利に尽きるというものです。
私からは、視察の最後に、安倍総理の掲げる国土強靭化の総点検の中に、上高地の河床上昇の課題も盛り込めるように関係者でスピード感をもって対応しましょうと提案させて頂きました。
高瀬川渓谷ではダムの堆砂累積を緩和するために、トラック輸送に代えて、10キロのトンネルを穿ちベルトコンベアーにより堆積土砂を下流に搬出する計画が動き出しています。梓川上流の上高地においては高瀬川渓谷と同様の対策は取りにくいと考えられますが、北アルプスの槍ヶ岳を境に、北の高瀬川、南の梓川ともに土砂の流出が地域社会に与える影響を、第一級の自然環境の保全と整合性を取りつつ、どのように制御していくのか、知恵が問われる課題に果敢に取り組んでまいります。
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