地元の秋の例祭に積極的に参加する中で、地域の氏神様を支える地区の氏子の皆さんの献身的な姿に感動の毎日です。その中でショッキングな神社の実態に遭遇することもあります。松本市内寿地区のある神社では、松くい虫の被害木が境内で倒れ境内が危険な状態となり、秋の例祭が行えない状態になっていました。全国的なデータも知りたくなり、神社本庁に伺ったところ、直近の平成30年7月豪雨、9月の台風21号災害、北海道胆振東部地震により、各地の多くの神社の被害が生じているとの情報をお教え頂きました。長野県でも、台風21号では私が氏子総代会長を仰せつかっている護国神社の鳥居が倒れ、仁科神明宮の杉の木の倒壊により宝物殿が壊れ、小野神社では社殿が半壊という状況になっています。
神社本庁が各都道府県の神社庁から被害状況の報告を受けても、それに対する公的支援については特にアイデアはないとのことでしたが、神社本庁からは神社であることが逆差別になっているショッキングな事例の紹介がありました。平成30年の7月豪雨の際に、佐賀県のある神社では、神社境内を流れる河川の橋に流木が集積し氾濫がおき鳥居倒壊などの被害が生じた際に、地元の市では「神社に渡るために架けられた橋であることから神社の責任で流木や土砂の撤去を行うべきで、市は一切手を出せない」との対応があったとのことでした。同じく佐賀県の別の神社では、神社の崖が崩れ土砂が民家に流入した事態に対し、地元の市は、「神社の境内であることから修復や費用の捻出はできない」との対応であったとのことでした。恐らく、当該市は、憲法の制約を意識した対応をしたのだと考えられます。
確かに憲法には、第20条で信教の自由の保障と国の宗教的活動の禁止を規定し、第89条で「公金その他の財産は宗教上の組織若しくは団体の使用、便宜若しくは維持のため、これを支出し、またはその利用に供してはならない」と規定されています。しかし、被災した神社に対して国や地方自治体が全く手を差し伸べてはならないことまでを日本国憲法は想定しているのでしょうか。
以前は、自然災害で住居被害を受けた方々に対しては、自助努力で立ち直るべきというのが政府の立場でした。その背景には個人の資産形成に対して公金を支出することは憲法違反であるとの財政当局の考え方があったからだと言われています。しかし1998年に議員立法により「被災者生活再建支援法」が成立し、今では最高300万円の公金が住宅被害を受けた個人に支出されるようになっています。農林業被害や商工業被害に対しても当然のように公金が支出されています。
しかし、神社に対しては、国も地方自治体も思考停止したように動きがありません。私は被災したという点においては、個人も事業者も神社もその立場に変わりはないと思います。被災状況を救済するということは、決して宗教への支援ではなく、地域の氏神様を支えているのは地域コミュニティーであることから、実質的には地域コミュニティーへの支援と考えるべきではないでしょうか。
これからの日本は、巨大災害に見舞われる蓋然性が強いと考えられ、地域コミュニティーも被災します。被災した地域コミュニティーに氏神様の再建までも丸投げして本当に地域のまとまりの象徴である氏神様が維持できるのか、考えていかなければなりません。
私は、現行憲法の規定の中でも、災害時には一定の被災神社に対する救済は可能だと考え、そのための根拠となる仕組みを考えていくべき時期に来ていると考えますが、仮に憲法の解釈を厳格に行う立場を選択せざるを得ないのであれば、自民党憲法改正草案にあるように、「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては」例外として公金支出の対象にできると確認的に規定することも考えていくべきだと思います。
我々は地域の元気や歴史文化を保つために日々努力しています。現行憲法の過度な解釈により、地域コミュニティーが崩壊の瀬戸際に陥るようなことは避けなければなりません。心ある皆様のご意見を頂戴したいと思います。
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