師走になったばかりの週末、地元の魅力を再発見する企画を行っているNPO「安曇野ふるさとづくり応援団」主催の「安曇野さんぽ」に久しぶりに参加しました。10人ほどが参加した今回の散歩の地区は安曇野市穂高新屋、耳塚地区でした。散在する道祖神、要文化財の曽根原家、本棟造りの燕山荘オーナーの赤沼家、JAあづみ組合長の千国家も訪問しながらのゆっくりとした散歩になりました。冬晴れの気持ちの良い寒さの中を、雪化粧の常念岳、雄大な有明山の扇状地域にある田園地域は安曇野の美しさを際立たせていました。
新屋公民館からスタートしましたが、ちょうど地区の皆様による公民館周辺の清掃作業に出くわしました。築後70年近い公民館は、ユニークな木造づくりで登録有形文化財に指定されている貴重な建物です。地区の皆様が大事に労わりながら使っている気持ちが伝わってきました。
乳川から曳いた新堰という農業用水路の水は、安曇野には珍しく北から南に流れており、その水は澄んでおり、先導者の解説を伺いながらゆっくりとしたハイキングは気分転換として最高でした。
旧千国街道の一角を占めるこの地域は牛が塩を運んだ歴史があるようです。馬が狼に対して驚くのに対して牛は驚かないことと牛は草を食めば済むのに対して馬は飼葉を持参しなくてはならなかった面倒があったとの解説も伺いました。
普段は自動車で通り過ぎる地域をゆっくりと歩いて回ると埋もれた歴史と文化的蓄積が蘇ります。歩きながら、10年前のロンドン近郊のハイキングを思い出しました。一年ほどロンドン駐在をしていた頃、週末よくロンドン近郊を訪れ、ハイキングをしました。彼の地には、パブリック・フットパスというハイキング道が全国各地に張り巡らされており、例えば[Time Out]社は「CountryWalks」というガイドブックを出しており、ロンドン市民はその本を頼りに、順にロンドン近郊のウォーキングを楽しんでいます。ウォーキングの最後には、その地域のジビエ料理を提供するレストランで美味しい家庭料理を楽しみ帰ってくるのです。当時春休みでロンドンに来ていた息子とともにウォーキングに行ったこともよい思い出です(注)。
ところで、インバウンドによる外客誘致を政府を挙げて進めていますが、こうした田園散歩をリストアップして整備していくことはその受け皿としてたいへん有効であると思います。「安曇野さんぽ」のコースを地方創生の手段としてハード・ソフト両面で整備するとともに、これを全国展開しインバウンド向けにアクセスしやすくする取り組みも求められます。考えるヒントは足元にあります。
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