白馬岳登山で思ったこと
今年の夏以降、松本駅に乗降客に、登山靴とリュックサックという登山スタイルのハイカーが目立つようになっている。今年の「山の日」関連のテレビ特集では、ドローンを使って北アルプスの魅力を従来とは異なる位置から際立たせる番組に思わず引き込まれた。「山の日」効果の広がりに、心の中で快哉を叫んでいる。
私は、昨年は上高地での「山の日」記念式典に参加し、その前に念願の槍ヶ岳初登頂を果たした。本年は、那須町での記念式典に参加し、その後、白馬岳の頂上を極めることができた。白馬大雪渓を経由する白馬連峰トレッキングは、日常の気持ちのわだかまりを解消する効果覿面であった。登山は頂上を極めるだけではなく登山自体が楽しいものだということを改めて認識させられた。お花畑の可憐さ、雷鳥の親子の健気さ、コマクサの繊細さを楽しめる山行は、登山は山頂を極める爽快感に加え登山そのものが楽しいものだということを再認識した。
長野県は学校登山という良き伝統がある。小学校高学年、中学校の生徒が故郷の山に登る伝統である。アルプスを極める伝統もある。しかし最近それが崩れつつある。引率の大変さや、安全第一を理由に学校登山をやめたり、より登山が容易な山を選択する動きがあるとのことである。白馬村の中学でも、難易度が高い白馬岳登山から唐松岳登山に変更することになった話も伺った。白馬村の子供たちが、白馬村のシンボルである白馬岳に登る機会がないまま大人になることを懸念する山小屋関係者は多い。
登山客が増える中で、それに対応する山小屋のスタッフ不足が深刻な課題となっている。白馬登山に同行して頂いた白馬山荘オーナーの松沢貞一氏によれば、山荘のキャパが人手不足により十分機能し切れていない現状を伺った。食事の質を上げるなどのサービス水準向上が人手不足により対応できないのが残念だとの話も伺った。
働き方改革で残業時間の規制強化が、季節労働の山小屋経営にどのような影響があるのかについて懸念する声も別の山小屋関係者から伺っている。過日、上高地の山小屋関係者を厚生労働省政務官にお連れし、労働法制規制強化に当たり現場の実情を加味すべきとの要請を行って頂いた。
国の内外から多くの方を山に誘うに当たり、多くの課題をクリアーしていかなくてはならない現状がある。山岳県長野を目指す以上は、登山環境整備に加え、こうした課題についても骨太な対策を講じる必要がある。
現在政府では、森林環境税(仮称)を創設する方向で議論が進められている。こうした新税制の税収について、山岳登山環境整備にもその使途が活用できるように働きかけていくことも政治の役割であると自らに言い聞かせている。
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