「大都市の保育所不足と若い女性の大都市集中」

 保育所待機児童解消に向けての政府を挙げての作業が進んでいる。今後、我が国で25歳から44歳の女性の就労が更に進むことを念頭に、一億総活躍社会の実現に向けての対策として、2017年度末までに50万人分の保育の受け皿整備目標を上積みし、待機児童の解消を目標としている。

 全国の直近の保育所申し込み数は256万人、そして待機児童数は23,553人と見積もられている。この数字からすると、全体からすると待機児童数はそんなに大きな数字ではないようにも思われるが、待機児童は大都市部に集中しており、その地域に限ってみると大きな問題となっているのである。

 実は、全国の市区町村のうち、およそ8割の市区町村において待機児童はゼロであり、待機児童問題は主として都市部の地域課題なのである。長野県の私の選挙区でも待機児童はゼロである。

 地域課題とは言え、待機児童を抱えるご家庭にとっては、切実な問題であり、緊急対策をしっかりと打つことが求められており、「保育所落ちた日本**!!!」との匿名ブログを国会の場でセンセーショナルな取り上げられ方をされたこともあり、与野党の議論を通じて象徴的政治的課題となった。

 一方で、長野県の私の知り合いの保育関係者からは、悲痛な声が聞こえてきている。せっかく時間をかけて地元で保育士を育成しても、大都市の保育士不足のために、大都市部の自治体、保育所から地元より高い給料、移転経費、一時金などをふんだんに提示され、都会に引っ張られてしまうという現実である。若い女性が大量に大都市に吸い上げられている事態を何とかしてほしいという声である。

 地方創生で大都市から地方への移住を促進する政策を進める中で、足元では大都市の保育所不足を起因として若者の大都市集中が起きているのである。まさに、短期的な必要とされる対策のために長期的観点の地方創生が阻害されていくという「合成の誤謬」が現実に生じている。

 この問題についてどのように考えたらよいのか、私も厚生労働部会などで厚生労働省の幹部に問うているが、同省関係者からは答えが出てこない。

 私は、都市部の保育所不足については、短期的には、保育所整備の負担を軽減するために、育児休業の活用、事業所内保育の拡充、年配の女性の活用、一時預かりの充実、働き方改革による男性の育児参加などの組み合わせが求められると考えられるが、より長期的には、事業所の地方分散、テレワークの推進といったことを並行して実現していくことが不可欠であると考えている。

 保育所不足を近視眼的対策でこなそうと急ぐあまり、別の面での弊害が生じうることを十分意識してのバランスある政策を作っていくことが求められる。

 我が長野県では、女性の就労率が高い中で、保育所利用率はさほど高くない、という実態がある。三世代同居といった恵まれた環境も影響していると思われるが、現場の実態をしっかりと研究することも必要かと思われる。


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