国民の祝日として新たに「山の日」を制定しようとする超党派の議連である「山の日」制定議連が衛藤征士郎会長の下に発足し、これまで議員会館で8回に及ぶ議論を重ねて来ているが、9月上旬に9回目の会合として、議連のメンバーが7名長野県松本市の上高地に集まり、一泊二日の合宿研修を行った。
国土交通省、環境省、林野庁、松本市、地元町会、山岳観光関係者などの御協力をいただき、現場視察を交えながら、中部山岳の砂防対策、河床上昇・堆砂への対処、登山道整備の在り方、トイレ整備、入山税などについて、地元山岳観光関係者との意見交換を行うことが出来た。勿論、「山の日」をどの時期に設定すべきかという点についても様々な意見が出た。以下、今回ので得られた意見を踏まえ、論点を整理してみたい。
国立公園内の施設整備については自然環境への配慮がもとより重要であり、関係者が細心の注意を持って臨んでいる。しかし、河床上昇を放置して、山岳観光が維持できなくなるような事態は避けなくてはならず、深刻なこの問題への本格的な対応が求められる現状を直視する機会に恵まれた。
登山道整備についても、驚くべきことに、何れの官庁が所管をしているのか、明確な役割分担が決まっていない現状にある。車が通ることを想定していないことがネックとなり国土交通省は「手を出せない」との立場をとる。元々自然発生的に出来上がってきた登山道について国がどこまで関与すべきか、といった問題もある。その整備には財政負担を伴うことから、地元自治体をはじめとして積極的に手をあげる主体は無いのが実際である。その間、山小屋関係者が現実問題として、「勤労奉仕」を行っている。
登山道の整備に充てるために入山税といったものを課する考え方についても、登山客の減少を来たすのではないか、個別の自治体でやると地域によってのアンバランスが生じるのではないか、徴収はどのように行うのかといった論点があり、一筋縄ではいかない。
「山の日」をどの時期に設定して行くべきかについても、山を想う日と考えるのか、実際に山に登る日を想定するのか、によって設定時期が異なってくる。北アルプス登山を前提にすると、6月ではまだ残雪が多く、夏から秋を想定する関係者も多い。一方で、山岳5団体は、新緑の時期である6月は、これから山に登ることを思い浮かべ、計画し、山の恵みを考える時期として適切ではないかとの議論を積み重ねてきている。6月に祝日が存在しないことも理由に挙げる。更に、「海の日」との連動を模索する向きもある。
国民の祝日を設定するとしても、これ以上休日を増やすべきでないとする意見もある。我が国の年間15日の祝日は既に多く、これ以上祝日を増やすことは企業負担が大きく、経済にマイナスの影響を及ぼすとの指摘である。一方で、日本人は年次休暇を消化しないために実際に休む日は必ずしも多くはなく、国民の祝日を増やすことにより日本人がより多くの休日を実際に取れるようにした方が、経済のパイは多くなるという意見もある。
様々な意見がある「山の日」にまつわる議論であるが、多忙な中にもかかわらず上高地に集った議連のメンバーは、実際に上高地を歩き、その神々しい景観に感動し、山に寄せる篤い思いをいだく多くの関係者と膝詰めで議論を行い、懇親を深める中で、早期に「山の日」を制定していくことについて、決意を固めた次第である。「ずっとここに居たい、去りがたい」という気持ちが自然に芽生えた上高地の魅力であった。
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