〜20歳台の人口流出を元に戻す政策転換〜
私は、国の政策の根本は、その時々の人口構成により決まってくるものと考えている。高度成長が成し遂げられたのは、低コストで勤勉な大量の若年勤労者がいたからである。時間が経過する中で、今や働く世代が減り、支えられる世代が増えている。社会保障制度を始め、日本の社会制度は人口動態の変化に合わせて貼り直さなくてはならない。
他方、人口動態は日本の各地域でその様相は異なる。「長野県の人口ピラミッド」という資料を見ると、全国的傾向と比較し、20歳台の人口が大きく減っている点が奇異に映る。「県外への進学・就職による人口減」がその理由である。まるで、人間の顔が大きな口をあけているような目立った切れ込みである。よく言えば、「人材輩出県」たる長野県、悪く言えば、「人材流出県」たる長野県、なのである。
長野県では県内高校卒業者で大学に進学する者の85%が県外に出る。全国でも指折りの流出率である。高度な学問を受けるために県外に出る若者の意欲を否定するつもりはないが、大学進学者の85%が県外に出てゆくことは尋常ではない。何かがおかしい。
県外進学のためには金がかかる。一人県外の大学に進学させると親は年間200万円から250万円の負担は覚悟しなければならない。4年で1,000万円である。ただでさえ、収入は減少する中、子供の教育費の工面は大変である。加えて、親が負担する資金は地元で活用されることはない。若者が地元で学び生活することで地元に落ちたであろうお金は都会で使われることになる。結果として地域経済の疲弊は進み、都会の経済だけが繁栄する。
一方で、諸機能を大都市に集約する都会優先の国土構造の有り方は、知らないうちに「累卵の危うき」の脆弱性を我が国に生ぜしめている。首都直下地震の危険性が指摘されている中で東京一極集中を是正しない政策は、津波対策に目をつむり臨海地域の原発を推し進めてきた政策と二重写しになる。
日本の地方の人口構造を「若者流出型」から「若者定着型」に変えていく政策こそが今求められる。これこそが、地域を元気にし、日本の国土構造の脆弱性を克服することにもつながる。これこそが我が国の現状を大転換する数値目標であるべきである。
今後、少子高齢化が進み、人口は加速度的に減少する中で、地域を支えるべき若者の多くを進学とともに都会に送り出すような開発途上国型のシステムを早急に改めていかなければならない。若者を出身地域で志を遂げられるような制度を仕組んでいかなくてはならない。地方分権改革はそのための重要な手段でもある。
そして、こうした大政策を着実に企画立案実施していく強い政治主導が今の政治に求められている。私は総選挙の後に、何としてもその先導役を務めたい。
(参考)
長野県の人口ピラミッドのリンク
http://www3.pref.nagano.jp/toukei1/jinkou/nenrei/pyramid.htm
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