「核燃料サイクルの行き詰まりと原子力発電」

〜再生可能エネルギーへの転換で地域社会に資金が還元〜

 2011年9月9日に河野太郎衆議院議員を松本にお呼びしての講演会を開催した。かねてよりの持論である原子力エネルギーに関わる核燃料サイクルの行き詰まりを指摘し、再生可能エネルギーへの転換を求める講演であった。

 15年にも亘る議論の積み上げの上に立脚する立論は説得力があり、その場に居合わせた約200名の聴衆は河野議員の骨太な議論に納得した印象を受けた。たまたまこの会合に参加した地元のエネルギー供給会社サンリンの柳沢勝久社長も、再生可能エネルギーの地域振興に資する可能性を指摘しておられた。

 原子力エネルギーを再生可能エネルギーに転換することで、地域社会がかえって元気になるというメリットを強調する議論には、「災い転じて福となす」きっかけを求める前向きの姿勢が感じられる。

 河野氏の議論は大変わかりやすく、そのエッセンスを以下にまとめた。今後の原発と再生可能エネルギーの議論を更に深めるために、メルマガ読者に河野氏の議論のエッセンスを共有したい。

 ・自身では原子力事故の話はしたことがない。我が国も当初は、石油一本やりでは危ういから原子力発電を始めた。真摯に国のことを考えていたはず。その後原発利権が発生し政策が歪んだ。

 ・ウランを燃やすと使用済み核燃料が発生する。米国はそれで終わりだが、日本はそうではない。日本は使用済み核燃料を捨てずに再処理しプルトニウムを抽出。それを高速増殖炉で燃やす。高速増殖炉ではプルトニウムが増える。高速増殖炉が出来ると今後2000年燃料に事欠かない、という仕組みが核燃料サイクル。ウランは70-80年で枯渇が見込まれる中でバラ色の未来が原子力発電にはある、との位置付けであった。

 ・しかし核燃料サイクルは辻褄が合わなくなってきた。高速増殖炉は当初20年後にできるとされていた。1995年10月のもんじゅの事故以来、もんじゅは停止。もんじゅ維持のために年間200億円がかかる。今では、2050年までは高速増殖炉はできないとの政府の説明。高速増殖炉から米英は既に撤退。しかし、もんじゅを止めると核燃料サイクルが止まるため、嘘でももんじゅはやめられない。更に、高速増殖炉ではプルトニウムはほとんど増えることはないのが実際だ。

 ・おまけに、取り出したプルトニウムの後の残る高レベル放射性廃棄物は放射能が強く、10万年かかって元のレベルに戻る。地下深くに埋めるしかないが、日本ではその候補地すら決まっていない。

 ・既に日本ではプルトニウムが30トンも溜まっており下手をするとテロリストの標的になりかねない。

 ・実は、使用済み核燃料は原発の中のプールに満杯状態。原子炉から取り出した使用済み燃料は行き場がない。プールがいっぱいになると原発を止めるしかなくなる。現在はそういう状態。

 ・六ヶ所村の再処理工場に3,000トンの容量の原材料プールがある。使用済み核燃料を青森県に持っていこうとしたが、青森はわが県は使用済み核燃料のゴミ捨て場ではないので再処理工場を動かさないのであれば受け入れない、と。

 ・そういう状況の中で起きたのが福島原発事故であった。この事故が起き、新規原発の増設は無理。耐用年数が来た原子炉は廃炉になるので、2050年には原発ゼロは必至。

 ・これからやるべきことは何か。省エネが不可欠。エアコン、冷蔵庫を買い替えるだけで電力消費は半分になる。蛍光灯をLEDに代える。断熱をしっかりやる。新技術を使うことで2050年までに4割の節電が可能。その上で再生可能エネルギーを増やす。どうしても足りなかったら石油よりはエネルギー効率の良い天然ガスを活用する。そういうことが必要になっている。

 ・再生可能エネルギーは地域分散型。秋田県の「あきたこまち」で秋田県民は800億円の収入を得ている。一方で秋田県民が仙台に本社のある東北電力に支払う電気代は1,000億円。秋田県内で再生可能エネルギーを開発すれば資金が地元に循環する。地域分散型の再生可能エネルギーは、金・経済をその地域内で循環させ、地域を活性化させる効果がある。

 ・分散発電により地域社会に金が落ちる。一極集中をバラケさせる効果がある。戦後様々な発電所があったが、電力会社統合でそれが廃止された経緯を思い出す必要がある。

 ・大きな発電所を作ると、事故があった時に影響が広範囲に及ぶ。遠隔送電だと送電ロスが大きい。

 ・エネルギーは地産地消により地域は元気になる。再生可能エネルギーだと全ての資源は国内産。石油などのエネルギー輸入代金25兆円も節約できる。


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