「国民の「元気球」を被災地に贈りたい」

〜消費をすれば被災地支援になる臨時特例税の提案〜

 東日本を突如襲った歴史的災害は、日本の経済・社会、そして日本人の者の考え方に大きな変革をもたらそうとしている。経済・社会が、効率性一辺倒で営まれてきた在り方の変革を求められている。「リダンダンシー」という言葉がある。「冗長性」という日本語が当てはめられるが、これは狭義では構造物やシステムなどの設計における余裕を指し、その対象物に想定される負荷や要求される性能に対し、それ以上の機能を持たせるように設計された「余裕」は「余地」を指す。普段は無用の長物であるが、構造破壊につながるリスクを低減させるメリットがある。そして、広義には「遊び」や「余裕」のことを指す。

 日本はこのリダンダンシーを犠牲にして、効率性を重視してシステムを構築してきた。トヨタの「ジャスト・イン・タイム」システムはこの典型である。部品の完全分業生産システムも同様である。農産物を生産価格の安い海外に依存する考え方も同じである。

 予期し得ない大きな災害事象が起きた時にどうなるかということでものを考えると、リダンダンシーの考え方につながる。震災で開港したばかりの茨城空港の評価が高まっているのもその事例である。震災で陸路が極めて不便になる中で茨城空港の存在が非常時の貴重な空路として利用者から好評である。日本の農業の位置づけも再評価され大きく変化するだろう。

 一つのシステムが崩壊した場合に、代替手段が複数あるということが極めて重要であることが歴史的大災害を経験してようやく理解された。このリダンダンシーという考え方が、災害立国の我が国の国造りの基本概念として定着していくことが求められる。

 町内会活動などのコミュニティの位置づけも極めて大切である。経済的価値からは評価されないが、災害時に人々を救う機能がコミュニティは存在することが改めて証明された。コミュニティの位置づけ強化により、「無縁社会」という言葉も、今回の災害で死語になっていくことが期待される。コミュニティの位置づけも、一種のリダンダンシーとしてとらえることが出来る。

 さて、リダンダンシーを高める政策を含め復興支援を考える場合に、財源問題は極めて重要である。震災をきっかけとして発生している極端な消費自粛ムードは、景気を冷やすことを通じて政府の財源確保に大きな制約をもたらしかねない。この問題は、人々が自らの消費の位置づけをどうとらえるかで解決が出来るように思われる。そしてその人々の気持ちを高める仕組みとして、消費をすればそれが被災地支援になるという触媒、クロスカップリングのシステムを国民の消費行動に組み入れることである。

 臨時・時限税制として、消費に対し3%程度の「被災地支援臨時特例税」を3年間の暫定税制として導入する。消費者は、消費をすれば消費額の3%が被災地支援に向かうことを意識するだろう。そうなるとむやみに消費を抑えるどころか、喜んで消費をすることになる。それは結果的に、経済を活性化し、被災地支援のための財源を確保することになる。

 3%の「被災地支援臨時特例税」の税収は、年間7.5兆円程度になると想定される。3年間で22兆円程度になると想定される。被災地復興のための予算が20兆円以上になることは間違いないであろう。その財源として国民の「元気球」を被災地に送ることに躊躇する人は少ない。今ほど日本人が互いに思いやる気持ちになっている時期は無い。政府はこの機会を見逃してはならない。


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