むたい俊介
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長野2区 自民党
【メッセージ】
「欧州再生可能エネルギー活用の現場から学ぶ」
〜デンマーク、オーストリアの再生可能エネルギー利活用〜
9月の上旬に欧州内にあって原発に依らないで国のエネルギーを確保しようとしているデンマークとオーストリアのエネルギー事情を調査する機会に恵まれた。デンマークが人口560万人、オーストリアが人口845万人と、我が国に比べると随分と小国ではあるが、一人当たりGDPは我が国よりも多く、両国とも歴史的には欧州全体に版図を広げたことのある超大国の中心地域を形成したこともある誇りある国である。
デンマークは1985年当時、一度は原発推進に動いた政府が国民的な議論の末、考え方を変え、風力発電を中心とする再生可能エネルギーによるエネルギー確保に大きく舵を切った。現在再生可能エネルギー比率は3割を超え、2050年には化石エネルギー比率をゼロにする目標に向け邁進している。この間、風力発電技術において世界最高水準の技術を蓄積し、風力発電システムを世界に輸出する競争力を備えるに至っている。現在では直径180メートルを超える巨大洋上風力発電システムを各国に売り込んでいる。
風力発電の普及を円滑にするために、地域の住民からなる協同組合方式や地域の住民の出資を認めるマイ・風力発電方式を導入し、住民自らが所有するエネルギー源確保の方式を導入している。デンマークは風力発電だけではなく、バイオマス発電にも力を入れ、以前は扱いに困っていた農地から産出する大量の麦藁(ストロー)などを燃料とする藁発電所が各地に広く所在する。農家は大きな四角形に束ねた麦藁を巨大トレーラーで発電所に持ち込む。発電所ではそれを細かく砕いて発電・熱供給を行う。炭化した燃えた藁の残渣は土壌還元剤として藁を持ち込んだ量に応じて農家に分配される。こうしたシステムの元に、農家は、厄介ものの藁が現金収入になり、且つ土壌改良材が得られるのである。地域単位の地域冷暖房システムが完備していることから、発電に加え、熱利用にも発電所が利用されていること(つまり、コージェネ)がエネルギー効率を最大限に高めている。
風も藁もそれぞれの地域に賦存する皆の資源である。皆の資源の可能性を掘り起こし最大限に活用する。そのために小規模の地域エネルギー供給システムを確立する。それが脱原発で自らを追い込んだ末にデンマークが辿りついたゴールであった。地域内で資金が循環することで、風力発電・藁発電は確実に地域経済を自律的で豊かなものにしている。
他方、山岳地域であるアルプス地域を抱えるオーストリアの地域資源は、豊富な森林資源と水力である。水力発電は伝統的に効率の良いエネルギー源であるが、近年はバイオマス発電が飛躍的に増えてきている。逐年増え続ける木材資源を増える量の一定割合を伐採して、7割は材木利用、残りを木質バイオマスとして発電・熱供給に活用している。急峻な山からワイヤーを使って機械的に材木を林道まで降ろす技術は驚きの技術である。林業資機材産業まで含めた林業関連産業従事者はオーストリアの就業人口の7%を占めている。
優良木材を材木として利用、その残材をチップ化して木質バイオマス発電・熱供給に利用するオーストリアも、地域資源を余すところなく使い尽くすノウハウが備わっている。オシアッハ村というウィーンから飛行機で50分ほどの人口600人ほどの湖畔の村があり、そこに連邦政府の所轄の林業研修所がある。林業に携わる人が備えるべき知識技術がしっかりと教え込まれる。最近では日本人向けの講座もあり、私たちが訪ねた時も日本人向けの1週間コースに21名の日本人が参加していた。長野県からも木曽森林組合の関係者が参加していたが、「昔は木曽にも急峻な山からワイヤーを使って材木を降ろす技術があったが、山が廃れる中でその技術も継承されず、オーストリアに来て彼の地のシステムを目の当たりにするのは何とも複雑な心境である」との話を聞く機会があった。
両国に共通して言えるのは、地域に所在する資源をしっかりと利用し、それによって地域を元気にしていくということを国づくりの根幹に据えているという国家の意思の存在である。この2カ国には過疎問題などは存在しない。若者は喜んで地域で暮らしている。何と言っても地方の景観、家並みの美しいこと美しいこと。農業収入プラス発電収入で豊かになっているデンマークの農家、林業が盛んでその収入で十分食べていけるオーストリアの農山村ともに、付与された経済的基盤を背景に地域の歴史と伝統に誇りを持って暮らしている。
翻って、我が国は、経済成長を求め続ける中で、大都市への一極集中、それを支えるための大都市近郊への原発、大規模火力発電所といったエネルギー供給の一極集中も進めてきた。その結果、地方の疲弊が起きてしまった。国づくりという観点で、我が国は壮大な失敗をしてしまったのではないかとの思いすらよぎる。
再生可能エネルギーとは分散型エネルギーのことでもある。それは、地方を元気にするための基本的政策転換にも繋がり得る政策であることを欧州の2カ国訪問を通じて確信した。
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