むたい俊介
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長野2区 自民党
【メッセージ】
「人口の「潜在自然植生」」
最近30代後半から40代にかけての女性の結婚願望が増えていると聞く。私のところにも、神奈川県から松本市に移り住み、市内の林業事業所に林業従事者として就職しこちらで伴侶を得た筑波大学卒のインテリ女性から、40歳手前の首都圏の企業に勤める独身女性が、同様に地方在住、結婚希望があるので知り合いを紹介してほしい旨の依頼があった。
日本経済の空洞化の加速で首都圏でも雇用不安が高まる中、原発事故もあり、女性が結婚を考える場合に、安心感があり、大都会とは異なり、地域社会と住民同士の絆が深そうな地方都市や農村を終の棲家として選択したいとする人が増えているような気がする。その中でも、安曇野や松本市は、首都圏からの移住希望先として最も人気が高いとされている。
そもそも日本社会は、先進国の中では異常に首都に行政機能を集約した結果、人口、経済、文化、情報などのあらゆるものが一極集中してしまっている。地域社会が多極分散で栄える欧州や米国とは大違いである。
そのことが日本の国土構造の脆弱性を生んでいることに我々は薄々気が付いていながら、そのことの重大性に気がつかないふりをして日々の暮らしを営んでいる。「累卵の危うき」という言葉があるが、まさに日本は、多くの価値を特定のところに集約していざそこに大きな衝撃が加えられると首都だけではなく日本全体が機能不全に陥るような国土構造を作り上げてしまっている。
ミュンヘン再保険会社が、世界の大都市50か所の自然災害のリスク・インデックスを作成している。日本の東京圏は、世界で断トツのリスク・インデックスNO1の地域である。因みに第2位はカリフォルニア、第3位は大阪圏である。
ところで、最近、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭氏が、「ホンモノの森」の復活を唱えておられる。宮脇氏は、人間の作るものと同様、森にもニセモノとホンモノがあり、「潜在自然植生」に基づいた森をホンモノの森だと位置付ける。仮に人間の活動の影響を全て停止したとすると、その土地の自然環境がどのような緑を育てる潜在力を持っているのか判定する。つまり、その土地本来の森で、多くは原生林に近い森であると考えるものである。
宮脇名誉教授は、今回の東日本の津波災害を調査する中で、防風林として植えられた海辺の松林が津波で根こそぎ流された事態に驚愕し、それに対して、シラカシ、マサキ、タブノキ、ヤブツバキなどの常緑広葉樹は津波に耐え、一部では木が津波の勢いを止めていた様子が確認できた点に注目する。
つまり、潜在自然植生に基づくホンモノの森は、高木、亜高木、低木、下草、その下の土壌生物群まで含めた立体的な多層群落で構成され、広葉樹は地中深くまで根を張り、水脈をつかむとともに枯れ葉が年々蓄積れることにより、豊かな表土を形成して、雨水を浄化し保水する「緑のダム」の役目を果たす。それが結果的に、地震や津波、台風、火事が起きてもびくともしない、と結論付ける。
宮脇名誉教授は、1976年の酒田大火の際、旧家の2本のタブノキが火の手を食い止めた例、1995年の阪神・淡路大震災で、カシ林が火事の延焼を防いだ例を上げておられる。
ホンモノの森では、ニセモノの森で不可欠な、下草刈りや枝打ちは不要なのだそうだ。ニセモノの森は、何十年も人間が手間暇かけて大木に育てても、ひとたび大雨や台風、地震、津波、間伐にさらされると簡単に折れたり枯れたりしてしまう。今回の松林も同じで、松は根が横に伸びるため、元々地震や津波に弱かった、ということになる。
私は、宮脇名誉教授の「潜在自然植生」との概念に接し、この考え方は今の日本社会の国土構造、人口配置の問題にもぴったりと当てはまる理念であると思う。
我々は、年に2度、日本全国に人口が分散する時期を知っている。それは盆と正月である。多くの人々が自らの父祖の土地である故郷に戻る。私は常日頃、この時点の人口配置こそ、日本社会にとって最も自然で適切な人口配置だと主張している。そして、これこそ、人の「潜在自然植生」なのだと考える。
東日本大震災が発災し、様々な機能を1点に集中させておくことの危険性・脆弱性を我々は痛烈に認識させられることとなった。そして現在、日本の首都に壊滅的な打撃を与える首都直下地震の切迫性(今後30年間の発生確率が70%)は政府自身が公表している。しかしそれに対する答えの一つである、国土構造の危機管理であるはずの首都機能の分散、そのために有効な地方分権政策は遅々として進まない。
我々は東日本大震災の津波に対する松林の脆弱性を他山の石として、国土構造の分散政策である地方分権に大きく舵を切らなければならない。その時に、国の政治が、防衛大臣の資質問題で盛り上がっていては困る。
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