むたい俊介
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長野2区 自民党
【メッセージ】
「ユーロ危機と地方交付税」
ギリシャの債務問題に端を発したユーロ危機は終息の行方が見えない。改めてEUと域内通貨ユーロという壮大な社会実験が、グローバルな市場の暴力の前に、決して完璧なシステムではなかったということを世界に印象付けた。
ユーロを擁したEUと日本を比較した場合に、決定的に異なるシステムとは何か。様々なシステムの相違の中で、最も大きなものは、日本の国の財政調整システムである地方交付税制度の有無ではないかと思える。
統一通貨のユーロは殆どのEU加盟諸国で統一通貨とされているが、EU諸国の財政状況はまちまちである。域内のある国の財政状況が悪くなると域内各国が自動的にその国の財政支援を行うシステムにはなっていない。極端に悪化した財政はその国の国債の金利を引き上げ、国債の価値は下落する。その国債を大量に抱えた金融機関の資産は劣化し、金融不安になる。そのことがユーロ全体の信用を落とし、通貨価値の下落につながる。
それに対して日本はどうか。夕張市が財政危機に瀕しても、夕張市の地方債が「債務調整」されることはなかった。夕張市は緊縮財政に陥っても、夕張市は財政再建計画を構築し、市の債務は律義にきちんと返済されている。夕張市が財政再建状態に陥っても、同じような懸念を持たれていた地方債が暴落することはなかった。夕張市の財政再建の事例は、日本の地方財政システムのセイフティネット機能の強さを象徴している。
この地方財政システムとは何か。それは地方交付税制度である。標準的な行政水準を地方自治体が維持できるために、地方税だけでは賄えない部分を地方交付税により財源保障するシステムが地方交付税制度である。年間17.4兆円(平成23年度地方財政計画)規模の地方交付税が全国の地方自治体に配分される。財政状況が良い団体には相対的に少なく、悪い団体には相対的に多く配分される。そのために各団体が抱えた地方債の償還が困難になるという事態は避けられる。
仮にこの地方交付税のシステムが日本に無い場合にはどうなっていたであろうか。島根県や高知県などでは地方債の元利償還金よりもそれぞれの県の税収が少なく、地方交付税を確保してやっとこれらの支出が可能となっている現状である。地方交付税制度が無くなれば直ちにこれらの県の財政は破綻し、債務調整が必要になり、これらの債権を抱えた銀行は金融危機に陥り、日本の円の価値も下落することになるであろう。地方交付税制度により国全体で各自治体の財源保障をしているシステムこそが、実はEUと日本の大きな違いなのである。
我が国では、地方交付税制度が日本の各地域の発展を支えてきた。しかし、近年その財源保障機能や政策誘導効果について地方自治体のモラルハザードをもたらすものだという指摘が加えられてきた。その批判に応え、補正係数の抜本的見直しや事業費補正の見直しが加えられた。それはそれでやむを得ない見直しであったかもしれない。
しかし、ギリシャ危機に端を発する欧州の信用不安を目の当たりにするにつけ、我が国の地方財政を下支えする地方交付税制度の機能の再評価を行う必要があるように思える。多くの人が当たり前だと思っている日本独自のこのシステムこそ、グローバリズムの進展の中で日本の信用の高さのセイフティネットとして機能している現実を我々は再評価しなければならない。
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