「選挙とは異なる憲法改正国民投票」

〜衆議院憲法審査会の議論が始まる〜

 この特別国会で総選挙後初めての衆議院憲法審査会の議論が再開しました。今回、希望が叶い憲法審査会の委員に復帰すると同時に自民党憲法改正進本部の幹事も拝命しました。

 大学で芦部信喜教授の元で憲法を学んだ衆議院議員であるとともに地元の長野県では有権者の皆様が憲法について関心が高いこともあり、憲法改正の行方について特に大きな関心を有しておりましたが、国会や党の場においてこの重要テーマの議論に参加させていただけることは非常な名誉であるとともに、責任の重さを感じています。

 我が国においてはこれまで国民が直接憲法について投票を通じて意思表示したことはありませんでした。憲法改正は最終的には主権者たる国民の投票によってその成否が決せられるテーマですが、制定時を含めこれまで一度も国民の投票が行われたことはありませんでした。

 今回は、初めて国民の意思を初めて問うことことを目指す議論が始まるのです。国会は国民の意思を問う提案である発議を行うことになるのですが、発議した結果、国民投票で否決されることにならないようにしていかなくてはなりません。単に国会で多数派が形成できればいいというのではなく、最終的に国民の過半の支持を得ることができるような環境を丁寧に整えていくことが何としても必要です。

 国会議員の選挙は、我が国の選挙制度の仕組みもあり、相対多数で当選者が選ばれるものです。それに対して国民投票は絶対多数が求められます。国会議員の多数と憲法改正に寄せる国民の意思表明とは制度的にずれが生じるものですから、この点についての理解をしっかりしておかなければなりません。

 11月30日に開催された衆議院憲法審査会では、欧州諸国を視察し議員団からの報告を受けた自由質疑が行われました。英国のEU離脱の是非を問う国民投票、イタリアの上院改革の是非を問う憲法改正のための国民投票の双方とも、結果的に時の政権党の思惑と逆の結果に終わったことについての分析や意見交換がおこなわれました。

 欧州調査で得られた教訓は、国民投票は、それが問う内容の如何よりも、時の政権に対する信任の是非を反映しやすいということでした。国民投票に問うテーマの問い方も大きな影響があるとの認識もあるようです。

 憲法改正と言えども、いや、憲法改正であるからこそ、政治や政局とは無縁ではいられないのかもしれません。欧州とは異なり、国防に関する独特の憲法規定、それに関する独自の歴史的議論の系譜を持つ我が国においてはその傾向がさらに強く増幅されることになり、それはある意味、やむをえないことなのかもしれません。

 言うまでもなく憲法は長く将来にわたり国の方向性を規定する最高法規です。であるからこそ、憲法議論に関しては、できるだけ時の政治状況や政局の影響を受けない形で国民が冷静に判断できる環境をつくり、国民の皆様に公平で公正な情報を提供し、国民の皆様に深く学習をして頂いた上で判断して頂く努力をしていくことが不可欠であると、改めて痛感した次第です。デリバラティブ・ポールという概念がありますが、一般の有権者の皆様に正確な情報が理解され、争点の賛否について熟議の結果が共有されなければならない環境が、今回ほど求められる局面はないかと思われます。

 今日の審査会でも、残念ながら党派性を感じざるを得ない質疑が目立っていました。憲法改正を前提とした議論を始めること自体が問題であるとの議論すらありましたが、憲法を国民の皆様に身近な存在としていくため、審査会の議論を通じ、憲法は自分たちの意思で変えていけるものだということを国民の皆様に認識頂くことも大切だと考えています。

 いずれにしても、選挙と国民投票とは別物であり、特に憲法改正についての国民投票は、通常の選挙の次元で考えていては間違えるということを、欧州調査団の報告から改めて認識する機会となりました。

 私自身の選挙区においても、衆議院憲法審査会での議論、自民党憲法改正本部での議論を紹介しつつ、できるだけ多くの機会を作り有権者の皆様と憲法討議を行い、有権者の皆様の意識に接することとし、その上で国会での憲法改正議論にしっかりと関与していきたいと、肝に銘じたところです。


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