「低投票率に終わった平成27年統一地方選挙を経て考えたこと」

〜地方自治にも議院内閣制導入の検討を〜

 平成27年4月に行われた統一地方選挙、私も国会中の最中、支援候補の応援に地元入りし、精一杯の応援をしたつもりである。長野県議選で1人区に擁立した公認新人候補を除き全員が当選、市町村長・議会選では応援した候補はほぼ全員当選した。当選した候補の共通点は、日頃の地道な活動がいざという際に生きてくるという点であることを再認識した。

 それでも長野県議選の結果は、定員58名のうち、自民党候補立候補者20名中16名の公認候補が当選という結果に終わり、全国で半数以上の都道府県議会で自民党議員が過半数を占めた全国的な選挙結果の中では些か寂しい結果となった。自民党長野県議団は、選挙後無所属議員を加え、22名の議員団を確保し、第1党の立場は維持したが、そもそも定数に比べ自民党からの立候補者が少な過ぎたという本質的な問題を浮き彫りにした選挙であった。

 6人定員に2名の自民党県議が立候補した松本市選挙区を見ると、選挙告示直前に立候補表明した32歳の新人の維新の党の候補が若い有権者の票を集めてのトップ当選を許した。幅広い年代層の有権者の投票行動の受け皿となる候補者を発掘しなければならなかったという普段の努力が求められているという現実的な課題を再認識させられた。

 以上は、選挙で選ばれる側の感想であるが、議員を選ぶ有権者の姿勢を分析すると驚愕の事実が浮かび上がる。松本市議会議員選挙の投票率は47%、松本市選出県会議員選挙の投票率は44%という結果になった。特に低いのは20代の投票率で、市議会23%、県議会22%に止まった。初めて選挙権を得た20歳の投票率は特に低く、双方とも18%という結果となった。投票率は最も高いのは、70歳代の有権者なのである。

 松本市域の県議選は少数激戦、松本市議会議員選挙は31の定員に若手が参戦し42名がひしめく多数激戦となったのに、有権者の反応は、過半数が投票にも行かないという惨憺たる結果となった。

 その原因は何なのであろうか。投票時間を夜遅くまで延ばし、期日前投票を可能とし、駅前でも便利に投票できる仕組みを用意しても、有権者は乗らない。住民自らが政治参加できる最高の機会に権利を放棄することで、地方自治が本当に機能するのかと心配になる。

 若年者の投票を促すために、高校生の時代から政治教育を始めるとの政府の動きがあり、私もそれに賛成であるが、私は、こうした事態を解決する1つのアイデアを以前から温めている。それは、地方議員の役割に関するものである。日本の制度では、首長と議会はそれぞれ有権者から選ばれ、執行権は首長に委ねられ、議会議員は基本的に執行権のチェックに止まる役割分担となっている。このシステムの下では、有権者はともすると首長選挙には関心があるが、議員選挙には興味を持てないということになりかねない。

 同じ議員でも国会議員の場合は、議院内閣制の下で国会議員が首相になったり、大臣になったりと行政権を握る立場に立つのと比較し、地方議員はチェック機能に特化する立場に止まる。これが地方議員選挙の投票率が低迷している理由の一つではないかと認識している。

 実は、欧米では、地方自治制度でも議院内閣制が採用されるのが通常で、選ばれた議員の中から自治体代表が互選され、議員が執行部入りすることが当たり前なのである。そのために有権者は、自治体代表となったり、執行権を握ることになる候補者を選ぶ目で真剣に議員を選ぶことになる。

 仮に、我が国でも欧米並みの議院内閣制を地方自治制度に導入したらどうなるか。私の直感では、投票率は相当程度アップするのではないかと考える。首長や執行部入りすることになると、それなりの人が議員を目指すことにもなる。

 しかしながら、こうした制度は我が国では制度上採用できない。日本国憲法では、首長と地方議員はそれぞれ直接選挙で選ばれなければならないと規定している。つまり2元代表制以外の制度の採用は憲法違反となってしまうのである。せめて、自治体毎に何れの制度を選択するか委ねたら如何なものかと考える。

 日本国憲法の規定が期せずして有権者の選挙離れを誘導しているとしたら残念なことである。憲法改正の議論がいよいよ始まるが、私も衆議院憲法審査会の委員として、民主主義をより機能するものとできるように、こうした論点も指摘し、よりよい憲法の在り方を模索して参りたい


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